爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「新幹線安全神話はこうしてつくられた」齊藤雅男著

新幹線の開業から運営方法が確立される頃に新幹線支社運転車両部長などとして活躍した齊藤さんが書かれた新幹線初期のさまざまなトラブルと対策の記録です。
昭和39年の新幹線開業時にはまだ自分は小学生で、しかも当時は九州にいたので実際に新幹線に触れるようになったのは少し後になってからでしたが、少年雑誌などを通じてその雄姿を見ては早く乗ってみたいとあこがれたものでした。

しかし、世界で初めての高速列車システムでまったく分からないことが多い中、さまざまな問題を一つ一つ解決してようやくここまでのしっかりとしたものにしていったという、特に初期のころの担当者の苦労はいかほどかと思います。

それにしても、最初の一年は余裕をもって東京新大阪を4時間にしていたということは知りませんでした。これを3時間10分にするという時も相当危ない橋を渡っていたようです。
また、事故での乗客死亡者は0ですが、工事関係者などの事故死者は結構発生していたようです。それまでの在来線の感覚では非常に危険だったのでしょう。

関が原の雪害対策も大変なもので、単に水をかけて溶かせば良いというものではなかったようです。しかし、これを乗り越えたからこそ上越や東北の新幹線が可能になったのでしょう。

しかし、いろいろなエピソードについて極めて正確に記憶してらっしゃるようなのには驚きます。いつ誰がどのようなことを話してというところまで間違いなく記載するというのは簡単なことではないでしょう。

それにしても、余計なことかもしれませんが、部長時代には齊藤さんはほとんど泊まりこみで朝から深夜まで働きづめで、ほとんど家にも帰っていないようです。ご家庭は大丈夫だったのでしょうか。