爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

アニサキス増加に対応、生カツオ販売に影響

昨日取り上げました、「アニサキス中毒の急増」の問題ですが、報道によれば販売店側もその対策として生カツオの販売を冷凍品解凍カツオに切り替える動きが出ているようです。

www.jiji.com

冷凍品解凍物はどうしても食味は低下し、しかも値段がそれほど安いわけでも無いということで、販売者側としても痛いところですが、それでももしもアニサキス中毒が出た場合は痛手になるということで、仕方のない対応かもしれません。

 

腐敗菌などによる食中毒と違い、鮮度が良いから大丈夫とは言えず逆に鮮度が良いほどアニサキスも元気と言うこともありえます。

やむを得ないところでしょうか。

 

「モンゴルvs.西欧vs.イスラム 13世紀の世界大戦」伊藤敏樹著

ジンギス汗が統一したモンゴル民族は圧倒的な軍事力で広大な地域を征服しました。

西方では中東やロシアまでを支配しましたが、現ポーランドレグニツァ(ワールシュタット)の戦いで西欧軍を大破したもののそれ以上の西進はせず停滞しました。

 

というのが、モンゴル帝国の膨張の一般的な理解であると思いますが、その詳細は知りませんでした。

ジンギス汗による世界帝国の樹立はアレクサンダー大王とも並ぶ偉業と言われますが、アレクサンダーが一代で成したのに対し、モンゴルはジンギス汗亡き後に息子や孫にまで引き継がれて実行されたのが特徴的です。

ジンギス汗自身はサマルカンド付近まで進んだ後はモンゴルに戻ったのですが、別働隊がロシア方面、ペルシャ方面と別れて進みました。

 

そのようなモンゴルの脅威を受けたのは、ヨーロッパだけでなく中東からエジプトにかけてのイスラム教国も同様でした。

ちょうどその頃にはいまだに西欧のキリスト教徒は十字軍を聖地に向けて進めているところであり、モンゴルをにらみながら一方では第7次十字軍を起こしていました。

モンゴルの侵攻も一段落し、イル汗国、キプチャク汗国が一定の地域を支配する段階となると、イスラム教国、フランス王国をはじめとする西欧、ローマ教皇、イタリア諸都市、ビザンツなどが入り乱れて争うことになります。

 

キプチャク汗国はキリスト教国を征服したために、その王妃にキリスト教徒を迎え、イル汗国ではイスラム教徒の王妃を迎えると言った具合に、縁戚関係もできるとさらにその縁戚からの影響も受けるようになり、モンゴルと西欧の協力を求めるという勢力も出てくるようになります。

 

モンゴル側はあくまでも軍事力で西欧侵攻と言うことも唱えていますが、実際はそのような力も既に無く、均衡した勢力の争いとなってしまいます。

 

このような三つ巴の勢力争いの時代というものは、西欧にとってはその後のルネサンスを呼ぶようなものであったのかもしれません。

イスラムでもバグダットのカリフがモンゴルに滅ぼされてしまったことで、新興勢力の台頭を許したという意味があったようです。

また、キリスト教イスラム教以外に仏教という異教徒が居たということが大きく意識されたということもその後に影響を残しました。

 

モンゴル侵攻がなければ本当に中世の終焉がこなかったかどうかは分かりませんが、それを早めたのかもしれません。

 

 

アニサキス中毒急増

魚類に寄生し、刺し身など生食で体内に入ると暴れまわって中毒症状を引き起こす寄生虫アニサキスによる中毒が急増しているようです。

www.yomiuri.co.jpこのニュースは福島県のカツオによるものですが、他地域、他品種によるものも増えているようです。

 

なぜこのように急増しているのかは不明ですが、アニサキスは虫の一種であり冷凍すると死滅するので、完全に冷蔵での流通が増えたためではないかと見られています。

 

これまで多かった、サケやイカなども冷凍流通過程を経ないで生のまま小売まで届くという、流通方法の進化にも関係があるのでしょう。

 

症状はとにかく胃腸の激痛ということが有名です。

アニサキス - Wikipedia

アニサキスは寄生する動物(魚類)にずっと安定して寄生しているわけではなく、幼虫がサバやイカ等に寄生し成長、食物連鎖によってこれらの魚類を食べる鯨や鳥類が再終宿主となるようです。

人間は中間宿主にも最終宿主にもなり得ず、体内に入っても数日で死滅するということですが、それまでの間に胃腸で暴れまわるために激痛が発すると言うことのようです。

 

イカなどでは、よく見ると白い繊維状に見えるために判断できるという話もありますが、上記の記事のように、カツオの場合は一般に刺し身の厚さがかなり大きく、分からないまま食べてしまうことも原因のようです。

 

アニサキス中毒の回避は、生で食べないことに尽きるのですが、48時間以上冷凍することで死滅するということです。しかし、せっかく生で買ってきた刺し身を冷凍するわけもないですが。

 

まあ、自分自身はそれほど刺し身好きというわけでもなく、ほとんど食べることもないので危険性は少ないほうでしょう。

また、遠洋マグロのように刺し身で食べる場合でも冷凍品の解凍の場合は大丈夫なのですが、近海、沿岸物で生鮮流通のものは気をつけたほうが良いようです。

「エネルギー基本計画」とやらが発表、だけどどこに「政策」があるのか。

エネルギー基本計画と銘打たれたものが発表されました。

mainichi.jp

「再生エネルギー」(これが”再生”などしていないということはもう何度も書いていますが)を主力にするということですが、24%と”わずかながら”原子力を上回る程度という、情けなくもバカバカしいものとなっています。

 

これについては、近藤邦明さんの”環境問題を考える”ですでに4月の段階で触れられています。

http://www.env01.net/fromadmin/contents/2018/2018_02.html#n1223

まず、近藤さんの主張しているのは、「エネルギー基本計画と言いながら電力にしか触れていない」ということです。

詳しくは近藤さんのHPを見ていただければ、詳しいデータと資料で説明してありますが、現在でも1次エネルギーの供給は80%が化石燃料(石油等)であり、1次エネルギーに占める電力の割合(電力化率)は44%に過ぎません。

 

再生エネルギーなどの比率を意味あるものとするためには、この電力化率を100%に近づけなければならないのですが、それには触れていません。

 

近藤さんの言われるように、この基本計画は再生エネや原発のメーカー、研究者、開発メーカーなどに金をばらまくだけのものになるでしょう。

 

現状の再生エネルギー電力の占める比率が5.4%といっても、それは「クズ電力」であるというのも妥当です。

これが22%になってもクズであることは変わりません。その出力の平準化のためには一度蓄電池に溜めなければならないでしょうが、その装置コストははるかに高くなります。

 

何度もここに書いているように、「再生エネルギー創生」や「省エネルギー強化」などでは間に合いません。一刻も早く「脱エネルギー社会への転換」に踏み切らねばならないと感じます。

sohujojo.hatenablog.com

 

「『課題先進国』日本 キャッチアップからフロントランナーへ」小宮山宏著

著者の小宮山さんは化学工学が専門ですが、東京大学の工学部長から副学長、そして本書出版時の2007年は東京大学総長の職にあったという方です。

それだけで反発を覚える人も居るかもしれません。

しかし、まあ我慢して読み進めました。

 

日本は様々な課題が山積みで、閉塞感がそこら中に漂っています。(2007年の話です)

資源エネルギー問題、環境問題、高齢少子化、教育問題等々ですが、これらは世界の各国でも今は問題化していなくても必ず今後大きな問題となってくると考えられます。

つまり、現在は日本でもっとも重い課題となっているように見えても、いずれは世界中に広がるということです。

 

それならば、この時点でなんとかして日本がこれらの課題を解決していけば、いずれは世界の問題を解決することができるのではないかと言うのが本書主題です。

 

これまでの歴史でも、先進国というものは課題も最初に襲ってくるものでした。イギリスでもフランスでも世界に先駆けて課題がのしかかり、それをクリアすることで先進国となりました。

日本でもそれが可能であると言うことです。

 

ただし、そのために何をすべきかというと、本書ではあくまでも「技術開発頼り」です。

「日本車は省エネで低公害」という文章がその意識を如実に表しています。

来るべき、エネルギー供給減少の事態にも、日本の技術でエネルギー効率を現在の3倍に引き上げ、自然エネルギーを現在の2倍に引き上げれば解決可能としています。

 

科学技術主導の時代を引っ張ってきた技術者、科学者にありがちな技術開発万能の思考にどっぷりと浸かりきっているようです。

「できないかもしれない」という恐れはまったくないのでしょう。

 

「輸送コストは原理的にはゼロ」というトンデモ発言も見ものです。

位置エネルギーの増減がないために、重力に逆らわない移動にはエネルギーが掛からないという、一見科学の原理に則ったように見えるのですが、実は実施不可能な話を持ち出します。

これはもちろん、「摩擦がなければ」という条件が必要です。

石油を中東からタンカーで持ってくることを挙げていますが、船舶輸送が非常にエネルギー効率が良いことは確かですが、それをトラック輸送を同列に論じるわけには行きません。

バイオマス発電のために細々とトラック輸送をするなどというのは不可能でしょう。

 

科学技術の限界は越えられると言う信念のようなものがあるようで、「専門家はたこつぼに埋没してはならない、社会はたこつぼに埋没した専門家に相談してはならない。その問題に集中しつつも基礎に戻って考えて、技術の大きな動向や過去の歴史、今後起こることを見通すことができる、そういった専門家に相談する必要がある」と書いています。

御自分がそういった見通す事ができる専門家であるということに自信を持っているようです。

 

教育改革については、当時御自分が東大総長であった関係か、そちらの方面に偏った議論のみでした。

 

まあ、ちょっと読んだだけ時間のムダだったかもしれません。

 

「課題先進国」日本―キャッチアップからフロントランナーへ

「課題先進国」日本―キャッチアップからフロントランナーへ

 

 

「そして、アメリカは消える」落合信彦著

少し前になりますが、さまざまなところで名前を聞いた国際ジャーナリストとして活躍していた落合信彦さんの2016年、トランプを選んだアメリカ大統領選最中の著書です。

 

しかし、この本の文章のあまりにも荒っぽいことには驚きました。

オバマを始めとしてアメリカ歴代の大統領や、プーチン習近平を激しい言葉で罵倒しています。

まあ、プーチン習近平はそれも仕方ないことかもしれませんが、アメリカ大統領を罵倒する理由としては、適切な時期に軍事力行使をして世界の警察官たるアメリカの役割を怠ってテロの蔓延を招いたという、いささか時代遅れの価値観から来たもののようです。

 

落合さんも現在76歳、本書出版時は75歳ですから年齢から来る焦りのようなものがあるのかもしれません。

 

かつては世界最先端のジャーナリストとして各国の要人にも直接インタビューを行っていたという方ですが、昔の価値観のまま年老いたということでしょう。

 

ジョン・F・ケネディロバート・ケネディ兄弟の暗殺は、効果的な軍縮を進めようとしたケネディが邪魔となった軍産複合体が手を回して行ったと断定しています。

ベトナム戦争遂行を妨げるためにCIAなどをコントロールしようとしたケネディに対し危機感を覚えたCIAと軍部、軍事産業が暗殺を実行したそうです。

 

その後の11人の大統領はほぼ全部否定しています。

その中でレーガンだけは評価していますが、リビア爆撃の決断などを称賛すると言った内容です。

 

書名を「アメリカは消える」としていますが、この理由を取り違えているようです。

著者の唱えるような、際限ない世界の警察官としての役割を果たしていくことが不可能となったこと事態が「アメリカが消える」理由でしょう。

それを、大統領の不決断のせいにしたところで仕方のないことです。

 

本書出版の時点ではまだトランプ大統領誕生は見えていません。

トランプは金儲けしか頭にない不適格者だという判断ですが、それに間違いはないものの大統領就任からのやり口は著者のお気に召すものでしょうか。

不法移民や難民を忌み嫌っている著者がトランプの言い分を聞いたら評価を変えそうです。

 

というわけで、書名に惹かれて読み出した本ですが、毒気にあてられて辟易しました。

 

そして、アメリカは消える

そして、アメリカは消える

 

 

トランプ大統領はどこまで波乱を起こしたいのか

北朝鮮との歴史的な会談も決定、東アジアの状況が劇的に変わる可能性も出てきました。

日本だけ除け者とかいう話もありますが、それは置いておいて。

 

一方、中近東ではまったく逆の姿勢で対立を激化させ、危機を煽っているようにも見えます。

 

イランとの核合意から離脱、制裁の復活も実施とか。石油供給の不安をも引き起こしているようです。

さらに、イスラエルのアメリカ大使館のエルサレム移転も強行し、パレスチナ人たちの反対運動が激化しています。

 

北朝鮮への姿勢と同様に、戦闘開始一歩手前まで煽りに煽って、最後に逆転して手打ち式で平和アピールでもするつもりでしょうか。

 

どうせ、渦中に放り込まれる現地の人たちの苦しみなどにはまったく興味も関心もなし、当然ながら同情は完全になく、棚ぼたで転げ込んだアメリカ大統領職と言う絶対的権力を動かすのが楽しいだけなのでしょうか。

 

恨みを買うのがトランプ一人だけなら勝手にすれば良いだけのことですが、アメリカ全体への恨み、さらには先進国全体への恨みにまでつながり、あちこちでのテロ頻発にも発展する危険性も十分に強いものです。

そんなところでテロの犠牲になる人達は、アメリカ覇権などには何の関係もなく、恩恵も受けているわけではないということも間違いないことでしょう。

 

それにしても、数々の政策はどれもオバマ前政権の忘れ形見。どうやらオバマの業績は全部消し去りたいだけのようにも見えます。

 

こんなトランプにすり寄っているとして、フランスのマクロン大統領は国内で批判されているようです。

マクロンよりもっと真っ黒ん気に擦り寄り、というより足元にひれ伏しているのが安倍です。大丈夫なのか疑問だらけです。

 

イラン危機の余波では石油価格の上昇が避けられないようです。

トランプの思考能力ではその後の展開が分かっていないのかもしれませんが、石油価格上昇はロシアの復活に繋がります。

ここまでロシアを痛めつけるのに成功してきたアメリカの国際政策が、崩れだしているのかもしれません。

その他の産油国の惨状もこれで救われるかもしれないとなると、興味深い展開になる可能性もありますが。