爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

今日見かけた交通危険行為「小学生の自転車飛び出し」

良い天気に誘われ散歩がてら買い物に出かけた時のことです。

 

歩道のある道を歩いていると、10mほど前の脇道から、すごいスピードで冬休み中の小学生高学年位の女の子が飛び出してきて、そのまま走り去っていきました。

脇道と言っても住宅の私道で、カーブミラーもなく家の影になって見通しも悪いところです。

そこを何の躊躇もなく、一旦停止なし確認なしという、度胸のある運転でした。

 

最悪の事態を考えれば、10秒ほど早く私が通りかかればちょうど出会い頭に衝突、あるいは接触、私も相当痛い思いをしたでしょうが、子供は自転車が転倒、投げ出されて車道に倒れ込めば最悪の場合、通りかかった車に轢かれるところでした。

 

さらに、その道は郵便局も近く老人の歩行者や自転車も通ることがあるところです。

ぶつかるのがそういった人であれば被害も大きいことが予測できます。

 

まあ、その子はこういったことに何の疑問もなく成長し(運良く事故にも遭わなければ)これから10年ばかりすると自動車の運転を始めて、相変わらず危険運転をしていくのでしょう。

 

数日前の学校の終業式では、年末年始も交通安全に気をつけて元気で始業式を迎えましょうと先生に言われてきたはずです。

それが被害者となるだけでなく、加害者にもなりかねない行為をしてしまう。

やりきれない思いを感じてしまいます。

 

2017年を振り返る 1月~3月

毎年年末の恒例行事で、今年一年を振り返ってみます。

 

1月

★東京の豊洲市場で敷地の地下水モニタリング調査の最終結果が発表され、環境基準を上回るベンゼンが検出された。

 今振り返ると、何のための調査だったのかもよく分からないような問題でした。

 都知事のパフォーマンスだけだったのでしょうか。それで大きな迷惑を被った関係者たちが気の毒でした。

 

★アメリカでトランプ大統領が就任

 全米各地だけでなく世界中で抗議活動が起こりました。

 その後もやりたい放題で世界を混乱させています。

 その中で何をやっても批判もせずに付いて行くのは日本だけのようですが、世界の人々からどのように見えているのでしょうか。

 アメリカ帝国の落日というものが現実化している中で、このトランプの大統領就任というものはそれを見事に体現していると言えますし、はるか後の未来から見れば(見る人が残っていれば)それを象徴するような時代と振り返られるのでしょう。

 

愛媛県今治市に、加計学園グループ岡山理科大学獣医学部を開設することが決定。

 長く続く加計問題の始まりとなった。

 

★トランプ政権がイラクやイランなどの人々の入国を禁止。

 これも前代未聞と言えるようなとんでもない政策でした。

 

★大相撲初場所大関稀勢の里が優勝。場所後に日本出身力士として久々の横綱昇進を果たした。

 次の大阪場所で連続優勝を成し遂げたものの、取組中に怪我を負いその後の場所は休場を続けている。このまま引退の可能性もあるか。

 相撲力士の怪我の多さ、激しさはひどいものです。生身の身体をぶつけ合うので危険性はありますが、何か対策を立てないとだめでしょう。

 

2月

北朝鮮金正恩委員長の兄、金正男が滞在先のマレーシアで暗殺される。

 北朝鮮の暴走を表すような事件でした。その犯行方法も素人の外国人女性を使ってVXガスを塗りつけるという、ショッキングなものでした。

 

★埼玉県のアスクルの配送センターで火災発生。鎮火まで12日間かかるという大災害となり、アスクルの業務も大きな影響を受けた。

 

★大阪の森友学園に国有地を破格の安値で払い下げしたという疑惑発覚。

 加計学園への便宜供与も含め、官僚の安倍首相への「忖度」が問題に。

 

★プレミアム・フライデーの実施開始。

 実際にそれを誰がやったのか、アホらしい出来事。

 

3月

★韓国で朴槿恵大統領が罷免された。

 数々の疑惑はあったにせよ、このような激しい行動に至るというのは驚きです。

 日本との差は大きい。

 

朴槿恵元大統領が逮捕される。

 

★千葉県我孫子市で、ベトナム国籍の女児が殺害され、PTA会長の男が逮捕された。

 これも衝撃的な事件でした。

 

★栃木県那須で、合同訓練中だった高校山岳部の部員たちが雪崩にあい、生徒など8名が死亡した。

 山には詳しいはずの指導者たちもその知識経験は怪しいものだということが分かりました。

 

 

「内田樹の研究室」より ”街場の五輪論のむかしの前書き”

内田樹さんの、「研究室」というブログから、以前の記事も読み返しているのですが、2017年7月31日付で興味深いものがありました。

街場の五輪論のむかしの前書き (内田樹の研究室)

 

ちょっと題名からは内容が見えにくいものですが、主題は「言論界の画一化、自己規制」というものです。

 

オリンピック招致について、内田さんも批判的な言論をしていたのですが、ちょうど招致成功のあたりには、ほとんど批判をする人も居なくなってしまったそうです。

そのため、マスコミからもオリンピック反対のコメントを内田さんに求められるということが相次ぎ、彼らに「他に招致反対の人は居ないのか」と尋ねたら、「想田和弘さんと小田嶋隆さん」だけだと答えられたとか。

 

同様の事態は、一時の維新の会全盛の頃の関西で、橋下徹批判の言論が事実上できなくなったという時にも見られたそうです。

特に、大学関係者で橋下批判をした人は学校上層部からすぐにストップをかけられたとか。

 

「空気を読む」ことの是非は色々と言われていますが、世間の意識にあまりに気を使い、空気を読んで世間に逆らうことは言わないという風潮が強まっているのではないか。

内田さんはそれを意識し、あえて非難されてもそういった異論を唱えようとしています。

 

私なぞ、世間の意向などはまったく無視して言いたい放題、内田さんのように名のある言論人ではないので、好き勝手なことを書いていますが、もしも実名であれば躊躇するかもしれません。

 

この記事は7月で5ヶ月ほど前のものですが、12月現在であれば「北朝鮮の脅威」と「ミサイル防衛システムの購入」でしょうか。

これに対しての疑問の声もほとんど見られません。

年金や健康保険料、生活保護費などをギリギリまで切り詰めようという国家財政窮乏の中、数千億円とも言われるミサイル防衛システム導入には異論も見られないようです。

 

そもそも、「北朝鮮の挑発」を煽りに煽っているのはトランプと安倍ではないでしょうか。

それで現実化した「北朝鮮の脅威」に、「対抗するのは当然」という雰囲気を作り出し、トランプから押し付けられたイージスアショアや戦闘機購入、巡航ミサイル導入などをすんなりと通す。

すべてが一つの流れの中で定められているかのようです。

「寒天・ところてん読本」松橋鐵治郎著

寒天と言えばところてんにして食べたり、サイコロにしてみつ豆に入れたりというところでしょうか。

最近は健康にも良いということで食べている人もいるようです。

 

ただし、私達のように微生物学や生化学をやってきた者にとっては別の見方もあります。

それは、微生物培養の培地としての寒天培地であったり、DNAなどの電気泳動の担体としてのアガロースゲルとしての方が馴染みがあるかもしれません。

 

しかし、寒天も電気泳動用などは非常に精製されていて高価であるとか、培地用でも精製度合が色々とあり値段もピンキリとかいうことは知っていても、寒天自体がどういうものかということは、それほど詳しいわけではありませんでした。

 

この本は、長野県工業試験場などで寒天に関する研究に長らく従事してこられた著者が、主に食用の寒天類(これも色々と種類がありそうです)について様々な面から解説されているものです。

「健康のため」として食べている人も少し知っておいた方が良いこともありました。

 

寒天の良さというものは「水分をツルルンと固めてさわやかデザート」ということです。

かなり薄い濃度で寒天を溶かすだけで室温でも固まり、そのまま安定しています。

牛乳やジュースなどを固めて夏のデザートにも最適ですし、健康にも良さそうです。

 

寒天に類するものとして、ゼラチンやペクチンも使われますが、ゼラチンは7%という高濃度にしなければ固まらず、さらに固まる温度と溶ける温度がほとんど変わらないという使いにくさです。

ペクチンも欧米ではよく使われますが、高濃度の砂糖とクエン酸を入れなければ固まらないものです。

それと比べると寒天は良質なものならわずか0.1%濃度でも固まります。これは1000倍量の水を含んで凝固できるという素晴らしい性質です。

 

その食感も食品としての重要な要素ですが、これは寒天の種類によって微妙に異なるようです。

しなやかさと弾力があり、ツルンとした舌触りと切れの良い歯ざわり、なめらかな喉ごしがあるものが優秀品とされています。

 

寒天のこのような性質を作り出しているのは、その化学構造にあります。

寒天は、D-ガラクトースという単糖とアンヒドローLーガラクトースという単糖が一分子ずつ結合したアガロビオースという二糖類が一単位となりそれが長く連鎖してできています。

これを「アガロース」と呼び、寒天の化学構造を指しています。

 

また、アガロース以外にも少し構造の異なる不純物が含まれていますが、これら「アガロペクチン」と呼ばれる化合物が、実は寒天の中でも健康に良い機能性成分なのです。

アガロース自体も食物繊維としての機能性はありますが、コレステロール低下効果の強いのはアガロペクチンでした。

ただし、アガロペクチンを多く含む寒天は凝固性が低下するためにこれまでの寒天製品としての評価は低かったようです。

 

寒天の製造法は、よく知られているようにテングサをよく煮て(硫酸を適度に加えると寒天を多く抽出できる)布で濾し、それを固めた粗製のところてんにします。

それを昔は寒冷地で凍らせては乾燥するということを繰り返し乾燥寒天としたものです。

その後、工業的には冷凍機と乾燥機を用いて作るようになりました。

 

ただし、現在ではそういった寒天とは異なる物質が類似品として出回っています。

伝統的に寒天を作っていた「テングサ属」の海藻以外にも、「オゴノリ属」「イギス属」という海藻も古くから使われています。

実はこの「オゴノリ属」の海藻が現在では「粉寒天」の主要原料となっています。

また、これらの海藻は大きく言えば「紅藻類」という種類の海藻なのですが、その中にはツノマタ、キリンサイといった海藻もあり、これらは寒天とは異なるものの粘性多糖類のカラギーナンの原料として使われています。

 

オゴノリが寒天の原料として使われるようになったのは、1950年ごろからで、東京湾で大量発生したためにそれを何とか利用しようとして「オゴノリのアルカリ処理法」という方法が開発されたのが契機でした。

これを「処理オゴ」と呼んだのですが、この処理オゴは工業的な乾燥法である圧搾脱水法と結びついて工業製品の粉寒天が誕生しました。

世界的に見るとこちらの方が現在の寒天の主原料と言えそうです。

 

なお、他の寒天類似物質にも色々のものがあります。

カラギーナンは上記のツノマタ等の海藻から取れ、寒天の弾力はないもののコレステロール低下作用はかえって強いようです。

ジェラン・ガムというシュードモナス属の細菌が作り出す粘質成分は、増粘多糖類としてカップゼリーなどの加工食品には多用されています。

グアガムという、マメ科植物種子の成分も増粘多糖類としてよく使われています。

 

 

食品としての寒天の優れた特性や、その食べ方なども詳述されていますが、そちらはここでは省略しておきます。

ただし、家庭で作る「低温酸処理による絶品の心太づくり」というものだけ少し引用しておきます。

これは、10倍希釈の食酢を15℃の温度にしてそれにテングサを浸し2時間置く。

それをよく水洗いし、水のpHが中性7.0となるまで十分に酸を落とす。

それを加熱し1時間煮熟する。この間pHが徐々に低下することがあるので頻繁にpH測定をして、6.0以下に下がったらすぐに炭酸ソーダ水溶液を加えて中和する。

テングサがどろりとしたら濾布で濾し、その溶液を固めると絶品のところてんになる。

ということです。

 

寒天・ところてん読本―本物をつくる・食べる・活かす

寒天・ところてん読本―本物をつくる・食べる・活かす

 

 

 

渡辺宏さんの「安心?!食べ物情報」で今年の10大ニュース発表

毎週日曜日に更新される渡辺宏さんの「安心?!食べ物情報」、いつも参考にさせていただいていますが、今週は今年の10大ニュース発表でした。

 

http://food.kenji.ne.jp/review/review944.html

 

渡辺さんの選択は私とは若干感覚が違いますが、それでも食中毒関係が最も多いのは当然でしょう。

和歌山・東京での大規模な学校給食食中毒(刻み海苔にノロウイルス付着)が堂々の一位。

それ以外にも、O157サルモネラカンピロバクターとランク入りです。

渡辺さんも何度も書かれているように、カンピロなどは肉の生食を止めるだけで相当減少するはずです。そんなもの日本の食文化でもなんでもないのに。

 

サルモネラは日本ではちょっと珍しいものですが、アメリカでは多数発生しています。

O157とカンピロは最近の流行り?でしょうか。

 

食品問題と言えるのは間違いないでしょうが、東京の豊洲市場移転問題も入っています。

小池都知事に始まり、終わった(まだ終わっていないか)問題ですが、あの化けの皮を剥がした一つの要因でもあったのでしょう。

とはいえ、巻き込まれて大きな影響を受けた関係者の方々は災難でした。

 

禁煙法案の行方というのも、ちょっとそれほどの問題かという気がしたのですが、これは田舎と都会での感覚の差かもしれません。

飲食店などでの禁煙を法制化しようとした前厚労大臣の内閣改造に伴う交代で、すっかりその動きは消え失せてしまいました。

それにしても、自民党などはなぜにここまで禁煙に反対するのか。目先の支持団体に動かされ、それ以外の物言わぬ多数の存在を忘れているのでしょう。

 

機能性食品に関しては、私の方がより問題視していると思いますが、最後にギリギリランクイン。

元々が胡散臭い制度ですから、薬事法や公正取引等の規制と紙一重です。

機能性表示はできても、それを広告に書き損なうと叱られるという、馬鹿な状態になっています。

 

飲食店などの人手不足もひどいとか。これも田舎ではほとんど感じられない問題ですが、都会では相当なものになっているのでしょう。

しかし、人手不足と言いながらまだまだ賃金アップのスピードは遅々としているようです。一気に高額雇用、しかも正社員となればあっという間に解消しそうに思いますが。

 

食品でないので「番外」とされているのが、子宮頸がんワクチンの問題です。

子宮頸ガンワクチンで推進派の論陣を張ってきた村中璃子さんが
英ネイチャー誌の「ジョン・マドックス賞」を受賞しました。これ
についてマスコミの反応は非常に悪く、当初は「産経と北海道新聞
のみ」が報道したそうです。その後、朝日や東京新聞でも報道され
たようですが、テレビではまだ報道しているのを見たことがありま
せん。

いまだに、子宮頸がんワクチン接種の問題では接種で健康被害を受けた被害者だけを問題視した報道姿勢が強いようです。

それでワクチン接種が滞ったせいで、年間3000人の命が失われ、1万以上の子宮が切除されている現状は変わらないということです。

 

渡辺さんの10大ニュース選考でも、政府に対する批判が強く影響するということです。当然のことでしょう。

 

 

 

「世界の奇書・総解説」自由国民社刊

巻頭に東京都立大学教授(当時)の高山宏さんが解説文を書かれていますが、あとはそれぞれの項目の専門家が紹介文を書くという形の、あまりまとまりは無い本です。

 

「奇書」といっても色々なものがあるでしょうが、本書で取り上げられているのは、

神話学 各民族の神話 ギルガメッシュ叙事詩死者の書も含む

博物誌と旅行記 プリニウス博物誌、山海経など

聖書学 死海写本、ダニエル書補遺等

偽書・暗号書 

奇想文学 

疑似科学・オカルト学・予言学

悪魔学

性文学

 

等々ですが、死者の書ギルガメッシュ叙事詩など、あまり「奇書」とは呼ばないようなものも紹介されています。

偽書・暗号書以降のものは、立派に「奇書」といえるものばかりのようですが。

 

一つの書物もせいぜい5-6ページでの紹介で、本文引用とわずかな解説だけですので、あまり詳しいものではありませんが、かすかな香りくらいは感じられるようになっています。

 

一つだけ偽書の紹介

18世紀フランスの「いかさま著作家」ジョルジュ・サルマナザール(本名不明)が書いた「台湾誌」という本があります。

しかし、実際の台湾とはなんの関係もなく、唯一実在の国として紹介されている日本の実状から、勝手に想像をして書いてしまったというもので、台湾語、台湾字も創作し、社会・風俗・動植物に至るまで適当に作り出して書いて世間を騒がせたそうです。

 

 

「だまされる視覚 錯視の楽しみ方」北岡明佳著

「錯視」といえば、同じ長さの平行した直線に内向き・外向きの矢印を付けるとあたかも長さに差があるように見えるといったものです。

 

そのような「錯視」にも様々な種類があり、それを用いて大きな作品を作る「錯視デザイン」というものを提唱しているのが、著者の立命館大学教授の北岡さんです。

 

錯視をテーマにした作図をしたという人は数多く居ますが、それをデザインというところまで高めた人は世界にも居ないだろうということです。

 

錯視といってもその表わし方には次のような種類があります。

静止画が動いて見えるような錯視

 オオウチ錯視、四色錯視、中心ドリフト錯視等

 

同じ明るさなのに違って見える錯視

 T接合部の明るさの錯視、輝度勾配依存の錯視、ヘルマン格子錯視等

 

水平のはずが傾いて見える錯視

 ツェルナー錯視、フレーザー錯視、市松模様錯視等

 

世の中には同じような概念で、「だまし絵」(トリックアート)というものもあります。

フィッシャーや福田繁雄の作品が有名ですが、著者によれば錯視とトリックアートでは、「アートとしては同種だが、サイエンスとしては別種」であるとしています。

作品に使われる現象あるいはトリックが異なるからです。

ただし、だまし絵と錯視デザインには多くの共通点もあり、それは作品の目的が視覚のメカニズム自体を表現することにあるということです。

さらに、見た人を驚かせて楽しませるという効果があることも共通です。

 

しかし、著者の考えるところでは、「錯視は生存の役に立たない」が、「だまし絵に使われている視覚現象は役に立つ知覚である」ところが異なるそうです。

 

「何の役にも立たない」ということを堂々とやっている。実にうらやましいことです。

 

だまされる視覚 錯視の楽しみ方 (DOJIN選書 1)

だまされる視覚 錯視の楽しみ方 (DOJIN選書 1)