爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

トランプの唐突とも見える暴走が止まらない エルサレム首都問題、法人税富裕層所得税減税

アメリカのトランプ大統領は最初から強固な反対派に囲まれているだけでなく、徐々に支持層も離れつつあり、危機感を募らせているようですが、そのせいもあり暴走ぶりがひどくなっているようです。

 

イスラエルの首都をエルサレムと認め、アメリカ大使館を移設するという問題では、世界各国の非難にも関わらずその自らの主張を曲げる気はなさそうです。

 

確かに、アメリカの議会でもその決議をしていたのですが、その後の大統領は皆賢明にも?それを実行することはありませんでした。

しかし、この時期にそれを強行することは百害あって一利なしなのですが、彼の娘婿がユダヤ人であるという以上に、アメリカのキリスト教の教派の問題も関係しそうです。

ameblo.jpアメリカのユダヤ人たちはどちらかと言えば共和党よりは民主党支持のはずですし、ユダヤ人のための政策などトランプが実施する利点は無いだろうにと思っていたら、上記記事のような事情があるようです。

 

アメリカという国はここまで宗教に左右されるということを再認識しておく必要はあるようです。

 

しかし、首都移転を非難する国連や各国を恫喝するという態度も問題でしょう。

 

もう一点、法人税などの税率を低減する法案を成立させ、「歴史的な決定」と自画自賛しているそうです。

www.huffingtonpost.jpトランプに投票し、いまだに支持し続けているのは貧しい白人労働者層であると思っていましたが、この法案のどこが彼らのためになるのでしょうか。

 

企業の収益からの徴税を減らし、それを使って経済を上向かせるというはかない期待を持たせるだけのものですが、これがうまく行かないことは世界中の経済政策と景気の関係からすでに十分証明されていると思いますが、まだそれに気づかない(ふりをしている)連中が多いのでしょう。

 

すでに、巨額の軍事費増を予定している米政権が、収入を減らしてどうするのか、まさかまたさらに日本への貢納増加命令ではないでしょうね。

 

とにかく、アメリカの誰に有利なのかよく分からないような政策ゴリ押しという、支離滅裂、分解寸前というトランプ政権ですが、できれば一人だけで自滅してもらいたいものです。なるべく他の人や国を巻き込まずに。

まあ、巻き込まれたいと熱望している亡国首相(某国首相と打とうとしたら誤変換しました。「正変換」か?)はそれでも良いのかもしれませんが。

 

「神経内科 頭痛からパーキンソン病まで」小長谷正明著

著者は大学で基礎医学研究をした後、医療現場の病院に神経内科医として転進したそうですが、そこでは看護師や保健師などの医療スタッフも神経内科の病気についてあまり理解できていないことに驚いたそうです。

ベテランの看護師でも脳血管障害とパーキンソン病の違いが曖昧であるため、これではいけないと簡潔なレクチャーをしたそうですが、これは患者や家族などにとっても有用であるとして、文章に残すことにしたとか。

 

神経の病と言っても一般の人からはあまり良くわからないものであり、精神科と混同されることも多いとか。

しかし、たまに話に聞くようなパーキンソン病筋萎縮性側索硬化症は、悲惨な症状だということはうっすらと知られているようです。

神経に関わる病気と言っても、その種類は非常に多く原因も症状もバラエティに富んでいます。

神経の働きというものは非常に精密なものであり、それが少し狂うだけでも大きな影響が出るものです。

これを著者は現代社会における情報システムにたとえています。

通信やネットワークなど、情報システムに異常が出れば社会の動きもスムーズにはいかないように、人間の身体の中も神経の働きが狂えばまともに動けなくなります。

 

神経内科に受診する患者で最も多いのは頭痛がするというものです。

しかし、頭痛と一言で言ってもその症状や原因は多岐にわたり医師による診断も難しいものだそうです。

風邪や高熱でも痛くなり、心因性のものもありますが、中には脳腫瘍やクモ膜下出血の症状として現れるものもあり、慎重に診断しなければならないものです。

 

「マヒと震えと千鳥足」と題された章では、そういった運動機能障害について解説されています。

このあたりは、そもそもの運動制御と言うもの自体もあまり理解されていないことのようで、その説明から丁寧に記されています。

 

脳梗塞や硬膜下血腫など、脳血管障害というものも重要な疾患であり多くの人の死因でもあります。

緊急対応の医療処置の進歩もあり助かる可能性も大きくなりましたが、なにより動脈硬化を予防することが大切のようです。

 

最後に、重症筋無力症やパーキンソン病筋萎縮性側索硬化症筋ジストロフィーなどの難病についても記述されています。

原因すら未だに明確なものではなく、治療も不可能というものです。

 

神経というものが動物の中でいかに重要なものかということが、病気を通してみるとよくわかるようです。

 

神経内科―頭痛からパーキンソン病まで (岩波新書)

神経内科―頭痛からパーキンソン病まで (岩波新書)

 

 

台湾でウナギ稚魚が不漁 日本も同じか

twitterフォロー中の水産資源学の勝川さんが書いています。

 台湾ではウナギ稚魚(シラス)の漁が極端に悪いようで、稚魚の値が高騰するかもということですが、勝川さんによればシラスウナギの回遊コースから見ると日本も同じ道を辿るようです。

 

ウナギは太平洋のはるか南で産卵し、その稚魚が数千キロの旅をして台湾や日本へやってきて、そこで成熟したらまた産卵地まで行って一生を終えるのですが、稚魚が辿り着いたところで全てを一網打尽にしたらどんどんと減るに決まっているでしょう。

 

シラスウナギを数十年間禁漁にし、十分に成魚数を増やしてからまた徐々に漁を始めるようにしなければ、もはやウナギは絶滅に向かう道は避けられません。

 

スーパーに行けばちょっと値は張るもののいつでもウナギの蒲焼きが買えたという方がおかしかったのでしょう。

「海賊がつくった日本史」山田順子著

放送作家などを経てテレビドラマの歴史考証をやるようになったという、山田さんですが、あとがきに書かれているようにどうやら先祖は海賊の末裔であったということで、その歴史というものにも非常な思い入れがあったようです。

 

そこで、古代から江戸時代までいわゆる「海賊」と言う人々の歴史というものを本にしました。

その記述は非常に詳細であり、ほとんど主要歴史には出てこないような場所、人々にまで及んでいます。

 

ただし、その知識の出典は出版された書物であるようで、特に古代についての記述は日本書紀などをそのままという所が見え、神武天皇が舟で熊野に向かったとか、神功皇后が船団を率い新羅を攻めたとかいう記述が留保なしに出てくると、ちょっと「この本大丈夫か」と思わせるものがありましたが、新しい時代で文献の信憑性も増して以降はその心配も無くなったようです。

 

「海賊」といっても、古い時代では「海の民」と言うべきでしょうし、戦国時代末期には「水軍」と呼ばれるようになります。

いずれも、西洋での印象のような「海賊船で商船を襲う」というだけのものではなく、平時は海運や漁業に携わり、商船が通りかかると通行料を取ったり、何かあれば襲って積荷を奪うという人々であったようです。

 

「海賊」といわれて思い出すのは、藤原純友の乱倭寇村上水軍程度のことでしょうか。

しかし、そういった人々は古代からずっと海に生活していたわけで、その活躍というものも続いていたわけです。

 

本書ではそういったことまで書かれていますが、例えば様々な戦争でも陸地内だけで済まなかったものは、必ず舟を操る人々が加担しなければならなかったわけです。

源平の戦いでも屋島や壇ノ浦では当然ながら舟を出し操船した「海賊」が居ました。

源氏方には摂津の渡辺党、伊予の河野氏がつき、さらに屋島の勝利以降は瀬戸内の海賊が続々と従いました。

最後まで平氏に付いたのは筑前の山鹿氏と肥前松浦党だったようです。

 

元寇の際も、不意をつかれた文永の役と異なり二回目の弘安の役では各地の水軍を動員し元軍の船に対しての海戦も繰り広げられました。

松浦党の他にも彼杵氏、高木氏、龍造寺氏などが数万の規模で戦ったそうです。

 

このように全国各地に居た「海賊」たちも、織田豊臣から徳川に続いた全国平定の過程で水軍として取り込まれ、秀吉は「海賊禁止令」を出します。

さらに徳川幕府は一部の海賊の棟梁を大名とし、その他の海賊行為は厳しく禁止してその活動は終わりました。

しかし、やはり日本の歴史にはこれらの海賊たちが大きく関わったと言えるでしょう。

 

海賊がつくった日本史

海賊がつくった日本史

 

 

「再読:ダイエットを医学する」蒲原聖可著

ちょうど3年ほど前に読んだ本ですが、また興味を持ち読んでみました。

(というのはウソで、読んだことなどすっかり忘れて図書館で手に取ってしまいなんの疑問もなく読了し、ブログを書こうという段になってなんとなく著者名に覚えがあり、調べてみたら読んだことがあることが判明しました。)

sohujojo.hatenablog.com

それでも、内容は知識欲を刺激させるものですので、前回書かなかったことを中心にもう一度書いてみます。

 

肥満になるのは食欲を抑える自制心が足らないからなどと言って、昇進させないとか就職採用しないとかいったことをやる企業もアメリカにはあるとか聞きますが、実はそのような「ダイエットで体重をコントロールできる」という思想には落とし穴があるようです。

遺伝的要素が大きいものであり、なかなか意志で制御できるものではないということです。

次の3つの概念は明白に誤りであるということです。

身体にどれだけ脂肪があるかということを脳は知らずに食べ続ける。

太った人は標準体重の人に比べて明らかに食べすぎている。

食べ物を摂取する行動は意志でコントロールできる。

 

エネルギー消費量というものは、個人によって大きな差があり、食べても太らないという人は単にそういった遺伝的性質があるからであり、意志が強く食欲をコントロールできているなどという人はごく一部だそうです。

さらに、ダイエットをして体重を減らすことに成功すると、逆にエネルギーの基礎消費量というものも減らす方向に向かい、また太りやすくなる体質になるとか。

リバウンドというものの原因もここにあります。決して、減量行為に疲れてしまったからだけではないようです。

 

 

女子運動選手で、特に長距離やバレエダンサー、ボディビルダーなどの体脂肪を落とさなければならないとされている人たちは無月経になることが多いということは知られていることです。

これも無理をするからだという単純な理由と思っていましたが、もっと医学的な関連があります。

実は、体脂肪細胞と言うもの自体、重要なホルモンを分泌する組織なのです。

脂肪組織のホルモン代謝としては、性ステロイドホルモンの代謝、例えば男性ホルモンのアンドロゲンから女性ホルモンのエストロゲンへの転換を行ないます。

したがって、体細胞が少ないと男性ホルモン過多となり月経異常を起こします。

また、エストロゲン代謝も担うために脂肪組織が少ないとエストロゲンからエストリオールへ転換が減少し、その働きである排卵を促す作用が上手く働かなくなり排卵障害や無月経となるそうです。

体脂肪組織というものがいかに大切なものかということなのでしょう。

 

アメリカでは様々なダイエット法の間で論争が活発です。

高タンパクが良いとか高炭水化物が良いとか、まったく相反するものもあり、お互いに批判しあう状況でしたが、農務省が2001年に一応の結論を出しました。

それによると、どのダイエット法でもはじめのうちは減量効果が認められるそうです。

しかし、多くのダイエット法ではすぐにリバウンドをしてしまいます。

結局、もっともリバウンドになることの少ないのは「適切な脂質、ある程度多めの複合炭水化物を中心とした食事法」だそうです。

また、ある程度の減量は起きるというダイエット法であっても、高コレステロール症や高血圧などの合併症が改善されないものもあるようで、そこまで総合的に判断する必要がありそうです。

 

肥満が合併症発症を引き起こし健康を損なうことは間違いないことですが、その対策は難しそうです。

 

なお、肥満という主題とは直接関係はないかもしれませんが、巻末に健康保険制度についての記述があります。

オバマケアという、保険制度の導入とトランプによるその否定という動きが象徴的ですが、アメリカには国民皆保険などという制度はなく老人・障害者と困窮者向けのものがあっただけでした。

一方、日本はほとんど全ての医療をカバーする国民皆保険制度となっています。

健康保険の範囲内の医療であれば全ての国民はわずかな自己負担で受けられることになります。

しかし、アメリカだけでなく他の国でもこのような皆保険制度というものは無いようで、その医療費の増大が国家財政を圧迫するまでになっています。

特に、肥満由来の生活習慣病治療等の場合、国民皆保険制度というのは大きな矛盾をはらんでおり問題が大きいというのが著者の主張です。

 

この点は非常に大きな問題であろうと思います。財政だけを考えているような改善案は数々出てきますが医療全体を考えるべきかもしれません。

ダイエットを医学する―人類は丸くなっている? (中公新書)

ダイエットを医学する―人類は丸くなっている? (中公新書)

 

 

ヘリ事故、「人的ミスだから機体構造に問題ない」で飛行再開

沖縄県普天間基地近くの小学校にヘリコプターの部品が落下した事故で、米軍はその原因は「人的ミス」によるもので、機体構造には問題がないので同型機の飛行を再開すると通告し、日本政府もそれを容認するということです。

www.tokyo-np.co.jp

まったく論理破綻で何を言っているのか最初は分からなかったものですが、まあどうせ理屈などはどうでもよく、沖縄県民の心情も考慮しないということでしょう。

 

「人的ミス」があっても事故につながらないようにするのが当然のことであり、人的ミスが直接事故につながるのは構造欠陥であるというのが当たり前のことなんですが。

 

最近読んだ本の通り、米軍側も日本政府も日米地位協定に書いてある通りの行動です。

「日米地位協定入門」前泊博盛著 - 爽風上々のブログ

 

政府にいくら普天間基地の危険性を訴えても、だから早く辺野古に移転しろというだけだということは明らかです。

しかし、辺野古も周囲に民家や学校が無いわけではありません。

目眩ましの策であることは間違いないことです。

 

やはり、「日本国内に米軍が好き勝手に基地を置き運用できること」自体がおかしいということをはっきりさせなければならないということです。

 

なお、この事故に関し、なんと現場の小学校や市役所に中傷をする電話がかかっているという呆れ返る事態になっています。ここまで日本人の感覚は堕落したのか。

 

いまちょうど、今年一年を振り返るというブログ記事を書いていますが、ますます暗澹としてきます。

もうこんな国はカルデラ大噴火で消えたほうが人類にとってマシなのでは。

「安心?!食べ物情報」より、賞味期限表示の問題2点

いつも参考にさせていただいている、渡辺宏さんの「安心?!食べ物情報」ですが、今週の記事では「賞味期限表示」に関して2点の問題が取り上げられていました。

http://food.kenji.ne.jp/review/review943.html

 

1点は、「賞味期限の年月表示」です。

普通は「年月日表示」であったのですが、これを「年月表示」にしようという動きが広がっているそうです。

もちろん、これは賞味期限の長い食品の場合に限ってのことなのですが、記事中にも触れてあるように、”頭の悪いマスコミ”はこれに対して批判的な記事を書いたり、「アメリカの陰謀」説を流すところもあるとか。

 

この原因は記事中に触れてあるように「流通小売」の問題です。

十分に賞味期限がある食品であっても、例えば「11月11日」までの賞味期限の食品が入荷した場合、その次に「11月10日」までの賞味期限のものが届いたらその受入を拒絶することが多いとか。

そのために、ある日付の商品を出荷したらそれ以前の日付のものは出荷できなくなるということが良くあるそうです。

これには、消費者の「一日でも新しいものを」という消費行動も関わっており、それに迎合した流通販売業者がそのような行動を取るからということです。

 

うちの家内もスーパーなどでの買い物では「それが何であっても」一日でも新しいものを買いたがります。まあ消費者としては仕方のない行動ですが。

 

それらの行動を抑え、不要な商品廃棄を減らすという意味では年月表示もやむを得ないものかもしれません。

 

もう1点の話題は「賞味期限の安全係数」です。

賞味期限の設定法は、

客観的な項目(指標)に基づいて得られた期限に対して、一定の
安全をみて、食品の特性に応じ、1未満の係数(安全係数)をかけ
て期間を設定することが基本です。

ということです。

すなわち、できるだけ科学的な方法で「いつまでその食品の品質が保たれるか」という期限を調べて賞味期限とするのですが、かならず「安全係数」というものを掛けて決められます。

 

これは、様々な要因からくるバラツキへの対策としては無くてはならないものですが、この安全係数をあまりに小さく取るのも問題です

つまり、実験的には2年持つものでも、安全係数を0.5として「賞味期限1年」としてしまうことです。

 

記事中にも、国は0.8以上にさせたいようですが、企業によっては0.5位を採用しているところもあるようです。

 

この問題は、もちろん食品廃棄の減量という目的のために言われているものです。

 

私もかつては食品関係企業で品質管理部門におりましたので、この問題は身近なものでした。

企業側から(それも製造部門や品質管理部門)から言えば、この安全係数はできるだけ低い方が安心です。

どうしても、製造技術にはバラツキもありますので、賞味期限設定の際に試験した商品サンプルより傷みやすいものができる危険性はあります。

これは、当然ながら技術力が低いメーカーの場合はより切実な問題となります。(私が勤めていた会社のように)

 

ただし、企業の中には「お客様のために賞味期限は短めにしています」などとお為ごかしの宣伝をするところもあるので、注意が必要です。

このブログでも何度も言っていますが、「賞味期限はメーカーが自分を守るために付けるもの」です。

消費者もそれを上手く使えば自分のためにもなりますが、あまりメーカーを信じすぎるのも危険かもしれません。