日本のみならず世界中で殺人事件など「悪の力」が猛威を奮っているようです。
このような「悪」というものはどのようにして出来上がっているのか。
姜尚中さんが、哲学的に、さらに多くの小説などから文学的に、考察しています。
姜さんの本書あとがきによれば、この本を書こうとしたきっかけは、ある大学の学長に就任するはずだった姜さんが辞めざるを得なくなったと言う事件だったということです。
(この事件の顛末ははっきりとは公開されておらず不明です)
その渦中の中で、周囲の人間の言動などに非常に不信感を感じ、そこで人間の「悪」というものについても考えざるを得なくなり、それをまとめて本にしたということです。
私は、「哲学」「文学」というものが非常に不得手であり、それを正面から扱った本書は読みこなすことが難しいと感じさせられるものでした。
したがって、著者の思いとはまったくずれているかもしれない感想を述べるだけとしておきます。
間違っていたらすみません。
ただ人を殺したいから殺したという、名古屋大学の女子学生の殺人事件がありました。
彼女は自分自身が存在していないと感じていたのではないかと書かれています。
それがあのような事件を起こすきっかけであったと。
そしてその行動はナチスドイツの虐殺とも通じるものがあります。
ただし、ナチスドイツはその対象を主にユダヤ人という説明しやすいものにしたという点では名大女子大生とは異なるところです。
彼らのような薄っぺらで実のない原理主義が世界中で出没しています。
民族原理主義、宗教原理主義、市場原理主義等々、彼らは何も信じられなくなったので、これを信じなければ生きていけないと思い込む。そこに原理主義が入り込むのだそうです。
最大の悪というものが現代の資本主義かもしれません。
100年前にマックス・ウェーバーはこれを「鉄の檻」にたとえました。これは今のグローバル資本主義こそふさわしい言葉かもしれません。
「悪である資本主義」という言葉だけに反応して図書館から借りてきた本だったのですが、中身は非常に深いものであり、難しいものでした。