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爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「拉致被害者を見殺しにした安倍晋三と冷血な面々」蓮池透著

政治経済 読書記録

なんとも刺激的な題名ですが、著者はあの北朝鮮拉致事件の被害者で2002年に小泉純一郎北朝鮮訪問と平壌宣言のあと帰国した蓮池薫さんの実兄です。

 

本書はその拉致被害者家族としてのこれまでの経験、そしてそれをめぐる政治家や官僚たちの動きなどを記しているものです。

 

なお、著者はすでに「家族会」を除名されているとのことです。それすらほとんど知られていないことではないでしょうか。

本書中にも書かれているように、「家族会」「救う会」等の拉致被害者関連の話題というのはマスコミでは触れたくないもののようで、あまり報道されることが少なくなっているようです。

 

一番大きな話題はやはり表題にもあるように安倍晋三がこの拉致問題を利用してのし上がった中でももっとも有力者であったということでしょう。

なお、この本が出版された当時はある程度話題になったようですが、この本を国会で安倍首相に示したお馬鹿な議員がいたそうです。「この本にはこう書かれているがどうか」と質したのですが、当然のことながら首相が激怒したとか。

まさか、書かれていることが真実であっても(真実でしょうが)国会の場で認めるわけもないでしょう。

 

蓮池薫さんが失踪したのは1978年夏のことだったそうです。

最初は奥土祐木子さんと同時にいなくなったことも分からなかったのですが、そのうちに徐々に事情が判ってきました。しかし遺留品もほとんどなかったために警察もまったく捜査をしてくれず放置されたということです。

今になってわかったことはその当時他にも10名の方が失踪したということですが、それらの関連性を疑うということもなかったわけです。

 

1987年になり、大韓航空機爆破事件が発生、その犯人として金賢姫が捕まりその供述から日本から拉致されてきた李恩恵という人の存在がわかりました。

これで北朝鮮が日本人を拉致するという事件があることが認識されました。

 

そして1997年になり横田めぐみさんを拉致したという元北朝鮮工作員が脱北し証言したことにより拉致被害者としての活動が始まります。

これで「家族会」が結成されることとなりました。

しかし、その活動と言っても署名を集める程度であり政府などの反応は最初はほとんどなかったようです。

 

そこにつけこんで「救う会」(北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会)なるものが乗り込んできて活動を主導するようになっていきます。

 

しかし、2002年9月に小泉首相の電撃訪朝、そして金正日との会談が行われ、日本人拉致が正式に事実であることが認められました。

そしてその10月に5人の被害者が帰国、2004年には蓮池さんと地村さんの子ども5人が帰国、さらに曽我ひとみさんの夫と子どもも帰国しましたが、その後はそれ以上の進展はないままです。

 

小泉訪朝時の官房副長官安倍晋三平壌にも同行しています。そして著者はそれ以降は安倍が拉致問題を追い風にして総理大臣にまで上り詰めたと表現しています。

彼はそれ以降も「あらゆる手段を尽くして拉致問題を解決する」と言い続けています。

しかしやったことと言えば経済制裁拉致問題対策本部の設置だけ、有効な手段はまったく取りません。

彼はこの問題を政治的に利用するだけです。北朝鮮を悪として攻撃することで右翼やその追随者たちから支持を得てきました。第2次大戦までの経過はどう捉えても日本は「加害者」ですが、唯一「被害者」顔ができるのが拉致問題だからです。

 

2002年の被害者帰国も実は「一時帰国」の予定であり、日朝双方の政府はそれで合意していました。

被害者たちも当初は北朝鮮の政府の言いなりですぐに戻るつもりだったのですが、家族が必死に説得し残らせました。

しかし、日本の外務省や政府関係者はそれは朝鮮との合意を崩し後の交渉に悪影響を与えるとして反対したそうです。

あくまでも家族が政府意向に逆らう形で被害者が戻るのを留めたということです。

 

被害者に対して政府から多額の慰謝料が給付されているという噂があるようですが、事実はまったく異なり被害者ひとりあたり月13万円だそうです。

これでは少ないと著者が安倍氏に追求したところ「薄ら笑いを浮かべながら」拒絶したそうです。

 

日本政府は数少ない処置として経済制裁北朝鮮に対して行なっています。

彼らは北朝鮮がそのうちに困窮し日本にひれ伏して謝罪するだろうという感覚でいるのでしょうが、実際は北朝鮮は「日本に謝るぐらいなら死んだほうがまし」と考えているそうです。経済制裁など何の効果も無いようです。

 

小泉訪朝の際に最悪だったのは、5人の生存とともに8人死亡ということを告げられ、それをそのまま鵜呑みにしたことです。

何の検証もせずに言われるままに持ち帰り、家族会にもそのまま告げただけでした。

その後、横田めぐみさんの遺骨と称する骨片を持ち帰りましたが、そもそも北朝鮮側もこの遺骨は高温で焼かれているので鑑定は不可能だということを告げていたそうです。

しかし、日本での鑑定で科警研では鑑定不能であったものが、当時の帝京大の講師が分析して別人のDNAを検出したということになりました。

そのために一般には北朝鮮が別人の骨片を持たせたとしてさらに不信感が高まったのですが、実はこの帝京大分析には疑問がありミスであった可能性がありそうです。

その担当した講師はその後大学を辞め科警研に就職したそうです。

 

その他の政治家もほとんどが売名のために近づくばかりでした。

また家族会の中でもカンパを私用に流用したとか、いろいろな事例が実名で書かれています。

拉致被害者の親たちがどんどんと亡くなっているという話もありました。そしてそろそろ被害者自身も危なくなっています。

本当の解決とはなにか、安倍の言うところにはないのは確かなようです。