爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「経済刑法」芝原邦爾著

刑事法が専門の法学者の芝原さんが、経済に関する刑法を概観できるように解説されたものです。
経済活動が活発になるにつれ、それにまつわる事件も起きその対応ということで刑法も整備されてきたようです。したがって、本書も必然的にその法律整備のきっかけとなった事件を挙げそれに対しての法という形での記述になってしまうようですが、まあそれが実態ですので仕方のないところでしょう。

経済に関する刑法というと、大きく分けて・会社経営に関するもの、・銀行など金融にかかわるもの、・証券取引にかかわるもの、・独占禁止法にかかわるもの、ということになるようです。

会社経営では、背任、特別背任といったものから、総会屋に対する利益供与、贈収賄、脱税などが含まれます。こういったところは例を挙げるにはいくらでも出てきて自由に取捨選択できるようです。
金融犯罪では銀行自体に関係するものも多いのですが、それ以上に銀行以外の者が金を集めるという出資法違反の事例が非常に多いところです。
証券取引ではインサイダー取引や虚偽の情報での相場操縦など、これも新聞ネタになるような犯罪が続出です。
独禁法も数々の事例がありますが、談合というものは経済以外の刑法にかかわるところになりますが、どちらにしても密接な関係がありそうです。

歴史的に見れば第二次大戦の戦争中の経済統制時期には統制違反の闇商売を取り締まるということで、経済刑法は比較的すっきりとした形になっていたようです。
しかし、戦後になり統制法自体がなくなったことで経済刑法もその根拠がなくなったものの、その他の経済活動各所に犯罪が起こるようになり、その後追いのような形で法整備ということがついていったということです。
まあ法体系ということでは不十分な体制なのでしょうが、これも社会の実態の表れなのでしょう。

法律学というものの端の方を少し味わえるような本でした。