東京ビッグサイトで開かれたイベントで発生した「無添加手作りマフィン」による食中毒事件は大きな関心を集め、「無添加が悪い」といった論調も多いようですが、実際のところ添加物で腐敗を防ぐようなことは難しく、もっと基本的な問題があるようです。
それについて、食品問題において的確な指摘で定評があると思われる、科学ジャーナリストの松永和紀さんが解説していました。
news.yahoo.co.jpPresident Onlineが松永さんに取材してまとめた記事のようです。
松永さんもプロのパン職人で指導的な著書も書いている竹谷さんという方に話を聞いていました。
するとこれは「ロープ現象」というBacillus属細菌の繁殖による腐敗であることが明らかだったそうです。
Bacillusは芽胞菌といって耐熱性の胞子を作る細菌で、加熱が甘いと生き残り増殖して粘性の多糖類を作りますので間違いないでしょう。
そして竹谷さんはこの事故の原因として次のようなものをあげたそうです。
竹谷さんは糸引きの原因として、①栗やりんご、ブルーベリーなど具材の選択に問題があり配合量も多く、焼きが甘くなったのではないか、②マフィンを焼き上げた後の保存方法に問題があった、③砂糖の配合量が少なかったことで、砂糖の効果である保存性が大きく下がり、①②の条件が助長されてマフィン内での細菌の増殖につながった……という見方を示しました。
その説明も非常に的確と感じました。
生のフルーツなどを大きく切って入れると見栄えは良いのですが、マフィンの焼き方としては非常に難しくなるそうです。
具材の部分と生地の部分の焼き加減がばらばらとなり調節が難しくなります。
また保存が5日間、クーラーがあるとはいえ室温というのは全くダメ。
さらに砂糖を半分で健康的と見せたいにしてもそれでは保存効果が落ちてしまいます。
竹谷さんにこのような生フルーツゴロゴロで砂糖半量のマフィンを作るように依頼されたらと尋ねたら、自信が持てないと断るということでした。
そのような難しいものをどうやらほとんど専門知識もないままに作ってしまったようです。
しかし、このような「手作り・自然派」で営業をしたいという人が増えているようです。
食品衛生の基礎知識もないままに手を出すのは非常に危険なことでしょう。