教育改革と言われるものが、アメリカ、イギリス、日本の各国で手がけられました。
それはどうも教育というものの「商品化」に他ならなかったようです。
その結果、さまざまな問題が引き起こされました。
それがどのような事態をもたらしたのか、主にアメリカとイギリスの新聞記事からそれに関する報道を紹介し、日本の実例と比較し、どのように教育の商品化というものが害をもたらしているかを明らかにします。
商品化された教育では、「教育商品」というものが利益を生み出すために作られています。
それは、学校商品、教職員商品、生徒商品、それにカリキュラム商品とテスト商品の5つです。
教育に関わるすべてのものが「商品」として扱われ、利益を生み出すために使われています。
現在の教育改革を一言で言えば「教育への市場原理の導入」ということです。
2000年の大統領選挙で当選したブッシュは、教育について「チューター、チャーター、バウチャー」の三政策を導入しました。
「一貫して失敗を続ける公立学校」を改革するためにこの政策を実施することとしました。
チャータースクールは特別な認可(チャーター)を得て新設される学校で、様々な規制を取り払っているので効果的とされました。
教員組合や教師の終身雇用を無くし、校長の資格も無くしました。
しかし、それらのチャータースクールはほとんど破綻しました。
チューターは、教育困難校とされた学校に通う生徒に、州政府からチューター(家庭教師)を雇う費用として年に2000ドルを支給するという制度でした。
チューターを派遣する会社が乱立し、どこのチューターを雇うかを押し売りするような圧力をかける会社が出現し、非難が集中しました。
教育バウチャーとは、失敗校に通う生徒の親に転校を可能とするように授業料補助を支給するというもので、州により差はあるものの2000ドル程度を補助するのですが、宗教学校にこれを含めるかどうかで争われたりと、制度はうまく回っていません。
学校選択を自由にすることで学校の程度を上げようとするのも狙いになりますが、イギリスでは階級によって地域が異なりそこの学校は生徒の親の階級を反映するために、労働者階級の学校の程度は低くなりがちで、そこから別の地域の学校を選ぶことはほとんど不可能です。
裕福で成績も良い生徒は学校選択も自由がききますが、労働者階級の子供にはその自由は事実上ありません。
日本では、どこの会社に就職できたかで大学を評価するような風潮がありますが、アメリカやイギリスでもさらに大きな差があります。
しかも、アメリカではエリート大学と言われる大学は授業料などの費用が他の学校よりはるかに高額に設定されている場合もあり、このような学校には富裕層の子供しかはいることができません。
そのような学校を卒業した学生は新人のときから高給を取ることができ、階層の固定化がますます進みます。
エリート大学に進みたいという生徒を教育する高校ではさらにレベルの高い学生を求めるという動きも見せています。
普通の親たちは「優秀な先生がいて、優れた教育を行うからその学校が優秀なのだ」と思いますが、実はもともと偏差値の高い生徒「高付加価値生徒」を多く集めて結果を出すと言う学校も多く存在します。
高付加価値生徒を数多く獲得するために奨学金をエサとして使う学校も出ています。
日本でも高校や塾、予備校ではそのような優秀な生徒の獲得競争を行っています。
他にも、各国の教育に関わる問題点を数多く紹介されています。
イギリスでも家庭教師を雇わざるを得なくなり、家庭教師への支払いは1億ポンド以上に上ります。
学校の教師の給与は下がり続けており、家庭教師の方がマシのようです。
教師の多くが数年で退職しており、その穴埋めも難しい状況です。
数多くの生徒が落ちこぼれになっているのは、イギリスやアメリカの方が甚だしく、しかも日本の場合は不登校になると引きこもるのに対し、あちらでは外に出て犯罪者になりかねない状況です。
なんとか学校に引き止めるために景品を与えてエサにするといったことも行われています。
そのためか、多くの生徒の学力は落ち続けています。
日本の教育現場のひどさはあれこれ言われていますが、どうやらイギリスやアメリカはそのはるか先を進んでいるようです。
日本もその後をたどるのでしょう。