爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

内田樹さんの研究室より、「大学教育は生き残れるのか」

内田さんはこれまでも何冊かの著書を読み、その論旨には共感を感じることが多い方です。

ご本人が書かれているブログ「内田樹の研究室」も興味深い内容が多く、教えられることばかりですが、この11月3日付の記事「大学教育は生き残れるのか」も面白いものでした。

大学教育は生き延びられるのか? (内田樹の研究室)

冒頭の挨拶の部分から見ると、国立大学の教養教育担当者の方々を対象とした講演会での議事録のようです。

相手が当事者のような聴衆ですから、相当踏み込んだ議論となっています。

 

まあ結論を先に言えば、「大学教育は生き残れない」ということでしょう。

医療崩壊がすでに10年ほど前に進行し、現状は医師や看護師の方々の献身的な努力のみで存続していると言えるようなのですが、それを大学も追いかけていって同じ状況になり、犠牲的な献身を行う関係者の努力だけで持たせられる存在になりそうです。

 

「人口あたりの論文数は先進国最低」という事実が示すように、日本の大学のレベルは低下し続けています。

「教育に対する公的支出の比率」も先進国最低です。

しかもその限られた予算を取り合いさせるかのような競争原理導入で、形だけの評価というものがますます学校の実力を奪っています。

 

その評価基準の明確化(予算の取り合いですから皆が納得できるものにしなければなりません)から出てきたのが「グローバル化度による評価」ですが、これが高いからといってどうにもならないという、非常にくだらない基準のようです。

留学者数、外国人教員数、在学者の留学、等々数字になりやすいものばかりですが、それを達成したからと言って学校のレベルが上がるはずもありません。

今はどこの大学でも学生に「1年間の留学義務付け」なるものが行われるようになってしまいました。

学生からは授業料を徴収しておいて、授業は海外の大学に丸投げして、先方が請求してくる授業料との「さや」を取る。何もしないで金が入ってくるのですから、大学としては笑いが止まらない。25%の学生が不在なのですから、光熱費もかからない、トイレットペーパーの消費量も減る、教職員もその分削減できる。いいことづくめです。

というひどい状況です。

これが行き着く先は、

そのうち「いっそ2年間海外留学必須にしたらどうか」と言い出す知恵者が出てくるでしょう。さらにコストカットが進んで利益が出る。すると誰かさらに知恵のある者が「いっそ4年間海外留学必須にしたらどうか」と言い出すかもしれない。そうしたら校舎も要らないし、教職員も要らない。管理コストはゼロになる。でも、そのときは大学ももう存在しない。

ということになるのかもしれません。

 

「このまま行けば大学教育は亡びる」という危機感が強く感じられる内容でした。