爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「核融合」に期待させるようなニュースがやけに目立ちますが。

現在の原子力発電は核分裂反応を利用するものですが、核融合というものが「究極のエネルギー」などと言われて開発が進められています。

しかし実用化どころか基本的な実験すらうまく行かずほとんど期待も消えかかっていたのが、ここに来て急にあれこれとニュースが飛び交っているようです。

 

欧米に乗り遅れるなとか、官民で研究会だとか、一気に盛り上がっているようにも見えますが。

 

核分裂がウランやプルトニウムなどの放射性元素の分裂エネルギーを用いるのに対し、

水素や二重水素三重水素などに高エネルギーを与えて融合させることでエネルギーを得るのが核融合です。

この反応は太陽などの恒星のエネルギー源であり、その存在は古くから知られていて、その応用も研究はされてきました。

しかし反応を始めさせるために巨大なエネルギーが必要ということもあり、なかなか実用化へは進められないままでした。

 

ところが米国立点火施設(NIF)という研究施設の研究者が、昨年末に投入エネルギーを上回る出力を得たと発表したことから急激な盛り上がりを見せているということです。

これについては、下記に引用したハーバード大学オレスケス氏の論評があります。

核融合への誤った期待」という題名がピッタリでしょう。

 

www.nikkei-science.com研究の中身は核融合反応を引き起こすための「点火」の作業が少しうまく行ったという程度のものであり、核融合全体が動き出すかのような取り上げ方は少しやり過ぎのようです。

 

なぜこの程度のニュースに皆が飛びついているのか。

やはり脱炭素化というエネルギー大変革が求められる中、有望な代替エネルギーというものが無いからでしょう。

 

再生エネルギーと言われる太陽光発電風力発電はどんどんと広がっていますがその欠点も明らかになっています。

核分裂反応の原子力発電は危険性もさることながらその放射性廃棄物の処分方法すらほとんど決まらないということが大きな問題点であり将来性も疑問です。

水素や合成燃料、アンモニアなど、エネルギー源とも言えないものにも飛びついていますが、投入エネルギーよりはるかに少ないエネルギーしか使えないのでは生き残れるはずもない偽エネルギーです。

 

そんな中で、原理的には「究極のエネルギー源」であることだけは確かな核融合発電に少しでも明るい光が差してきたかのように見えれば飛びつきたくもなるのでしょう。

しかし、この先には無数の問題点が噴出してくるでしょう。

まあ一瞬の花火のような騒ぎで終わるだけのようです。