爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「戦争犯罪と歴史認識」北原惇著

現代の戦争でも数多くの戦争犯罪が起きていますが、日本に関わりのある問題としては第二次世界大戦が大きなものでした。

日本の軍隊があちこちで戦争犯罪を犯したとして戦後の東京裁判などで裁かれました。

また歴史認識と言われる問題も今に至るまで中国や韓国から指摘されています。

ただし、東京裁判というものについては様々な点から批判もされています。

また歴史認識といっても第二次世界大戦までの日本の侵略だけが取り上げられるべきなのかどうかも問題です。

 

この本は東京裁判というものがどのような性格のものであったのか。

それを詳細に論じるとともに、他の国には戦争犯罪と言えるようなものがないのかといったことを描いていきます。

 

ただし、まえがきにも書かれているように、この本はいわゆる「リビジョニスト」のように、「日本は戦争犯罪を犯していない」と主張するものではないということです。

さらに、著者は「私は右翼でも左翼でもない」とも言っています。

日本で言う右翼も左翼もどちらも全体主義に進みがちであり、それには与しないとしています。

また、他の国は戦争犯罪を犯していないかという点では中国と韓国のやってきたことを紹介していますが、その他の国は犯していないなどと言うことはなく、アメリカもソ連もさらにひどい戦争犯罪を犯しているのですが、この本では中国と韓国のみを取り上げたとしています。

 

こういった周到な書き方は、著者の北原さんの経歴にも関係がありそうです。

北原さんは高校卒業後すぐに渡米しアメリカの大学を卒業、その後アメリカやヨーロッパの大学や研究機関で働いてきたということで、欧米の学界での主張の仕方といったものは十分に体得しておられると見ることができます。

 

しかし、やはりここでの中国と韓国の戦争犯罪の書き方、並べ方は何らかの意図があってのものと感じられます。

 

極東国際軍事裁判東京裁判)については、良く論じられているようにA,B,C級の3つの区分がされていますが、そのうちのAとC、はそれまでは国際法として規定されていたとは言えず、明らかに事後法での裁判であり、不当であることはもちろんです。

また、B級の裁判で日本人を裁くのであれば、それと同様の連合国側の犯罪者も多数あったにもかかわらず、戦勝国側である連合国の犯罪には一切触れられることもなかったことから、完全に戦勝国の復讐劇であったことも明らかです。

 

そういった問題点にも触れられていますが、あまり他書には描かれていない、「日本を弁護したアメリカ人弁護士」も書かれているのは珍しいでしょう。

 

この裁判では日本が勉強してきた大陸型の法体系とはかなり異なり英米型の法体系によるものが優先していました。

そのため裁判の形式上の問題でも日本側の不利が存在したため、多くのアメリカ人の弁護士が日本の弁護を担いました。

それは決して形だけのものではなく、彼らの弁護は非常に質の高いものであったようです。

 

日本だけが戦争犯罪を犯したわけではないということを示すため、中国と韓国の戦争犯罪を描いています。

これは第二次世界大戦の時だけではなくその後も含めてあちこちの戦場で犯された犯罪のものです。

中国で言えば、東チベットの侵略、東トルキスタン侵略、内モンゴル侵略、中国人でありながら敵に協力したとして処刑された漢奸といったもの。

ただし、これらは中国に言わせれば内政問題だということでしょうが、その最初では決して中国国内であったとは言えず、明らかに別国と見なされるところを侵略し自国領としたのですから、さらに罪は重いということでしょう。

韓国については、独立後の韓国国内での犯罪、済州島での犯罪、ベトナム戦争時の韓国軍の犯罪といったものです。

 

どれについても重い話ばかりです。