爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

日本経済新聞社説に「火力発電の脱炭素化の工程表を示せ」という意見

日本の経済界のオピニオンリーダーだと自分たちは思っているに違いない、日経新聞の社説に表記のような記事がありました。

www.nikkei.com

おそらくここに書かれているような認識が経済界トップにも蔓延しているのでしょう。

 

まず「脱炭素化」は進めなければならないというのが了解事項のようです。

それ自体、決して確かなことではないのですが。

しかもそれは、本来の「化石燃料の使用量を徐々に削減しいずれは無くしましょう」という意味とは遠く離れ、単に「二酸化炭素の排出を(その場では)減らしましょう」という形だけのものであることにすら、気づいていないようです。

 

それがため、「足元では原子力発電所の再稼働が進まず、再生可能エネルギーへの主役交代にはまだ時間が必要だ。その間は火力に頼らざるを得ない現実がある。」と、矛盾だらけの記述を恥も外聞もなく書いています。

 

再生可能エネルギーへの主役交代」などは「時間が必要」ではなく「絶対に無理」だということも知らず。

記事の最後には「リチウムやコバルトなどの金属資源は産出量が限られ産地も偏る」ということは書かれていながら、それと「時間が必要」とどうつながるのでしょう。

 

そのような理由付けではなく、ヨーロッパからの外圧だということは触れずに、「石炭火力はともかく廃止、その代わりにLNG発電設備の新設」などと言うことを書いています。

LNGも立派な化石燃料であり、比較的少ないとはいえ二酸化炭素も発生するのですが、それには目をつぶるのでしょうか。

 

さらにひどいのは、水素やアンモニアを発電に使うという、まったく脱炭素化にもならない方法を称揚していることです。

さすがにどちらも地中から掘り出せるものではないということは分かっているのでしょうが、「ブルー」だの「グリーン」だのといった表現だけで実態を見つめていないのは明らかでしょう。

どちらも現状ではそれを作り出すのに大量の化石燃料を必要とし、何の脱炭素化にもつながらないのですが、それはどこか遠くの大陸でやるから良いのでしょうか。

 

いずれは太陽光発電風力発電による電力で水を電気分解する「グリーン水素」などを使うという夢物語ですが、そもそもその電力が不足するという状況でそのようなところに電力を回す余裕があるはずもありません。

夢物語は「夢のような」ではなく「夢でしかない」ものでしょう。

 

さらに「水素供給網で世界をリード」などと言うさらに現実感のまったくない話で締めくくられます。

このようなものが社説として新聞社の看板に出てくるというのは日経の程度が分るというものでしょう。