現代は第6の大絶滅時代だと言われています。
この本でも第1部は古生物学的な「絶滅」をも対象としています。
しかし、第2部、第3部では核兵器についてや資本主義の暴走まで視野に入れるという、非常に広い範囲を論じるものとなっています。
著者の澤野さんは社会思想史が専門ということですが、非常に幅広い知識をお持ちと見えます。
「ニュー・パンゲア」という言葉が出てきます。
パンゲアは超大陸とも言われますが、パルム紀の後半から三畳紀の間存在していた、地上のすべての大陸が一つにまとまっていた時代の大陸です。
その後大陸は分裂し今に至っているのですが、そのためにその後の生物の進化は独立し各地で違った生物相ができることとなりました。
しかし現代は大陸こそつながってはいないものの、人間の移動が頻繁となるためにあたかもニュー・パンゲアとでも言うべき状態となっているということです。
このため人間の感染症だけでなく、動物や植物の病原体も頻繁に流通するようになり、その病気も世界一斉に発生するといったことになりました。
アフリカツメガエルはツボカビにより絶滅危機になりましたが、そのカビははるか離れた大陸からやってきたものでした。
二酸化炭素濃度は増え続けていると言われていますが、実際の大気中二酸化炭素濃度は低下し続けていました。
ここ数百万年を見てもCO2濃度が300ppmを下回ると氷河期になるといった現象が見られそれが何回も繰り返されてきました。
特に18世紀にCO2濃度が280ppmとなったのは危機的な状況で、これ以上下がると植物の中には生育が不可能となる種も出てくる危険性があったそうです。
この傾向が出てきて以来、植物はその対策としてC4植物という省エネ性(二酸化炭素をそれほど必要としない)を獲得した種を作り出しました。
C4植物の出現はせいぜい1000万年前のことであり、二酸化炭素濃度の減少に応じたものだったようです。
しかし18世紀以降の人間による化石燃料の燃焼とその結果としての二酸化炭素濃度上昇は急激なものとなりました。
核兵器とその拡散の危険性などについての部分はあまりよく知らないということもあり難しいものでした。
原爆などは簡単に作れると言われていますが、実際にはそうでもないようで、イランがやろうとしているウラン濃縮による原爆製造はあまりにもウラン必要量が多いために各国でももはや行われていないとか。
その代わりに行われているプルトニウム原爆ですが、これはコントロールが非常に難しくちょっと失敗すればすぐに爆発する危険性もあるようなものだとか。
そのすき間を縫って開発に成功したのがパキスタンのカーン博士で、そこにはパキスタン人に何もできるはずもないと言った欧米の蔑視感により監視が甘くなったためもあるそうです。
19世紀に人口爆発が起こり、食物不足から大規模な食糧危機が起きるはずでした。
しかしそこにちょうど生まれたハーバーボッシュ法による化学肥料の製造でそれは救われました。
それが人類の恒久平和につながるなら良かったのでしょうが、実際にはその後また人口爆発が以前以上に大きくなりもはや何かあれば大惨事となるほどに膨れ上がっています。
人類は絶滅の危機にあり、その危険性はさらに大きくなっているということでしょう。