爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「大絶滅時代とパンゲア超大陸」ポール・B・ウィグナル著

生物の大絶滅というと、白亜紀末の恐竜を絶滅させた隕石の衝突が有名ですが、実はその前の時代のペルム紀から三畳紀にかけて起きた絶滅の方がはるかに多くの生物を死滅させました。

その原因については未だ明確となっているわけではなく、様々な学説が出されて確定はしていませんが、この専門の研究者である著者のウィグナル教授がその全体像を解説しています。

 

2億6000万年前のペルム紀から1億8000年前のジュラ紀中期までの間に、大きな絶滅が6回起きています。

本書では、そのうち特にペルム紀末の2億5000年前の大絶滅と三畳紀末の2億年前の大絶滅を詳述しています。

 

その当時は地上の大陸が1つの超大陸パンゲア」にまとまった時代でした。

実は、その事実が大絶滅にもつながっているというのが著者の学説です。

 

3億年前に南半球の巨大な大陸ゴンドワナが北方のローラシアという大陸と衝突し巨大なパンゲアという大陸ができました。

そして、ペルム紀に入ってシベリア東部がさらにパンゲアに衝突し、全大陸がほぼ一つの超大陸となりました。

その衝突の衝撃が作用し、シベリア・トラップと呼ばれる「洪水玄武岩地域」という地層を生み出しました。

そこでは、現在見られるような通常の火山活動とは桁違いの大噴火が起き、膨大な溶岩が数百キロにもおよぶ地域を覆い尽くしました。

これを「巨大火成岩岩石区」(LIPs)と呼び、その後も数回起こっています。

 

この2つの事象、パンゲア+LIPs=大量絶滅 というのが著者の主張です。

 

シベリア・トラップが引き起こした大絶滅は、ペルム紀末の2億5200万年前に始まるものでした。

海洋に住む多くの生物は完全に消滅しました。

例外は軟体動物と魚類の一部で、その絶滅時代を生き延びてその後の発展につながりました。

地上の生物もほとんどが死滅し、わずかに淡水水域に生育するものと、小さな植物のみが生き残りました。

また極地に生物の生き残りが見られることから、非常な高温化が起きたことが分かります。

これらの激変の原因は、シベリア・トラップの大量の溶岩から放出された火山ガスや二酸化炭素による環境変化と考えています。

これらの影響により海洋の酸性化、気温の上昇が起き、海洋の広い範囲で無酸素状態が発生し海洋中での生物の大量絶滅が起きました。

このような高温化は地上生物の絶滅には直接はつながらなかったようで、そちらには大量のハロゲン物質の放出によりオゾンの消失と紫外線の増加が考えられています。

 

一旦ほとんどの生物が絶滅した三畳紀ですが、その後半には生物が劇的に回復し繁栄します。

魚類や二枚貝類は適応放散を遂げ多様な植物と動物が出現しました。

地上でも比較的寒冷であった極地周辺で生き延びたものが冷却化とともに地上に広がっていきました。

 

三畳紀の末期には、またもかつてと同様のLIP形成が起こりました。

現在のモロッコに当たるところで始まった火山活動は、どんどんと広がり現在のアメリカ東部にまで広がっていきました。

そこから生物絶滅に至る過程はかつてのものと同様でした。

ただし、以前の絶滅と完全に同じではなく、違った要素もあった可能性があります。

 

このような地球温暖化による大量絶滅からの回復には、海洋無酸素化が発生することにより有機物が分解せずにそのまま埋没し、そこに二酸化炭素が取り込まれて空気中の二酸化炭素濃度が減少し、地球寒冷化につながったのではないかと考えられています。

そして、そのような海底への有機物埋没が起きるような、浅海が大陸がすべて一つにまとまっていたパンゲアの時代には非常に少なかったと見られます。

 

その後、パンゲアは徐々に分裂し今につながる諸大陸の時代になりました。

そうなると、実は大陸周辺の浅海というものも面積も広がっていきます。

そこに有機物が埋没することで空気中の二酸化炭素を地下に戻すことができ、それ以降は大絶滅につながらなくなったのではないかというのが推論です。

 

生物の大量絶滅というものは繰り返し起きたというのは事実ですが、その原因を探るというのは難しいものでしょう。

パンゲアという超大陸と、そこでの激しい火山活動がこの結果をもたらしたという著者の説は説得力があると感じます。

 

大絶滅時代とパンゲア超大陸: 絶滅と進化の8000万年

大絶滅時代とパンゲア超大陸: 絶滅と進化の8000万年