生物の大量絶滅と言うと、恐竜が死滅した6600万年前の白亜紀末のものが有名ですし、現在も人類によるものが急速に進行しているという話もありますが、大量絶滅で最も激しかったものはペルム紀ー三畳紀境界大量絶滅という、2億5100万年前のものでした。
さらにそれから約8000万年ほどの間の三畳紀には何度も大量絶滅が起きていました。
この原因や状況について、大量絶滅を専門に研究してきた古環境学者のリーズ大学ウィグナル教授が一般向けに易しく?解説している本です。
白亜紀末の大量絶滅の原因はユカタン半島付近に落下した巨大隕石のせいだということでほぼ決まりのようですが、ペルム紀からの大量絶滅の原因はまだ確定はしていません。
しかし、著者の見解ではそれはLIP(巨大火成岩岩石区)と呼ばれる大規模な火山活動のためだということです。
そして、その頃は大陸がちょうど一つにかたまっていたパンゲア超大陸の時代でした。
それが巨大火山活動の影響をさらに増強したのが大規模な絶滅の理由だということです。
2億5200万年前に始まった、ペルム紀末ー三畳紀の大破局の入り口は、シベリア・トラップと呼ばれる巨大な玄武岩洪水を残している噴火でした。
シベリア北西部で起きたと見られるこの溶岩の量はその後浸食を受けているために正確に見積もることは難しいのですが、500万立方キロメートル以上はあったと見られます。
さらに他の同様の洪水玄武岩を残しているLIP火山活動と異なり、シベリアトラップではごく短い期間(100万年以下)でこれだけの噴出が起きました。
そのために溶岩だけでなく大量のガス噴出も大きな影響を与えました。
ガスには二酸化炭素だけでなく二酸化硫黄や、さらにメタンも含むという厄介なもので、大気の組成を一気に変えてしまうほどでした。
この結果急激な温暖化が起き、さらに海水の酸性化も起こします。
また海水中の酸素を取り除き無酸素化した海域が多くなります。
この結果、水中の生物の多くが死滅してしまいます。
それまで繫栄していたサンゴ、腕足動物、ウミユリ、外腔動物の多くは絶滅しました。
しかし、二枚貝や腹足類などの軟体動物の中には生き残るものもあり、それが次の時代に爆発的に繁栄することになります。
陸上の生物も多くが死滅するのですが、その時期が海中の生物と同時であったのかどうかは難しいところです。
急激な温暖化により植物がほとんど死滅したようです。
それにより食物を失った動物も絶滅していきました。
この時期に石炭の生成がストップしているという証拠もあり、木質を供給していた樹木類も長い間姿を消してしまったようです。
三畳紀はその絶滅からの回復が起きたのですが、その大絶滅ほどではないもののかなりの規模の絶滅がその後繰り返し起きています。
その最大のものは三畳紀の最後に起きたものですが、これは現在のアメリカ大陸とアフリカ大陸に痕跡を残しているLIP火山活動によるものでした。
しかし、その痕跡自体が二大陸に分れているように、その時期にはパンゲア超大陸は分裂を始めていました。
地球上の大陸がすべて一つになってしまった、パンゲア超大陸というものが、大量絶滅に関わっています。
超大陸となってしまうと、多くの陸地は海岸線からはるか遠くになってしまいます。
すると、海水が蒸発して雲になり雨となって降水しても大陸中央部の多くの地域にはまったく水が回らなかったと考えられます。
実はこの水分の回転というものが、陸地の岩石の風化を速める効果を持ちます。
砂状となった岩石は空気中の二酸化炭素と反応して炭酸塩鉱物となります。
それにより大気中の二酸化炭素濃度を減少させ気温を冷却する効果を発揮します。
それが少なかったのが超大陸時代であり、二酸化炭素高濃度の期間が長くなったのが大量絶滅につながったと考えられます。
現在までそのような大量絶滅が起きなかったのは、大陸分裂のため降雨量が多く岩石風化により二酸化炭素濃度が少なく抑えられたためでしょうか。
それともシベリアトラップのような巨大火山活動が起きていないためでしょうか。
まだまだ疑問が多いところでしょうが、研究は今も続けられているようです。