爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

日本経済はこのまま底なし沼に入り込むのか。

物価の上昇が進み、それの原因の一つなのかそれとも相関しているだけなのかよく分かりませんが円安も進行しています。

 

それにも関わらず、日銀の総裁発言は緊張感に欠けるものであり何らの反応も示さないに等しく、さらにそれ以上に政権からの意思表示はほとんど見られません。

 

金融緩和の掛け声にがんじがらめに縛りつけられ、何の思考もできなくなったかのようです。

 

経済専門家たちの発言も似たようなもので、日米の金利差がどうのこうのという解説は聞こえてきても、どうすれば良いのかということを明示する人はほとんど見られません。

それなら素人なれどなにか言ってやろうか。

 

ここまで苦境がさらに進行しているのは、やはりコロナ禍による影響に加えてウクライナ紛争によるロシア経済制裁や貿易障害でしょう。

 

ウクライナ侵攻以前からコロナ禍のための製造沈滞、そして流通の遅延により商品の品薄感が広がり欧米ではインフレが進んでいました。

石油価格もウクライナ侵攻以前から上昇が始まっており、紛争でそれに拍車がかかったということです。

世界的なインフレ進行は当然ながら日本へも影響を及ぼし、それが波及してきたと言えます。

 

さらにロシアによるウクライナ侵攻で、欧米のロシア経済制裁が始まりロシア産天然ガスや石油の貿易制限ということになりエネルギー価格の上昇がさらに進むことになりました。

これに加えウクライナの小麦などの農産物の輸出がほぼ不可能となり、ロシア産の穀物も輸出されず、世界的に食糧不足となりつつあり、その価格も高騰してきています。

 

このような状況に対するため、アメリカは公定歩合の大幅な引き上げでインフレ対処をする姿勢を強めています。

その上げ幅は非常に大きなもので、インフレに対するアメリカ政府の警戒感が強いことを示しています。

しかし日本はまったく金利を上げようということはなく、「金融緩和を維持する」と言い続けています。

この結果、日米の金利差がどんどんと拡大していることで「円売りドル買い」という傾向が進みその結果円安が加速するということになりました。

 

円安になると輸入品の価格も上昇、それが物価高にさらに追い打ちをかけ、これまでどんなことをしても上がらなかった物価があっという間に底抜けになったかのように上昇を続けています。

 

この状況になっても政府日銀の対応は何もないに等しく、「金利上昇を防ぐ」といって国債の買い支えを日銀が行うというのが見たところ対策らしいものでしょうか。

それもどれほど効果があるかも分かりません。

 

石油価格上昇への対応は緊急発動で決められた石油元売り会社への補助金注入というものが機能しており、現在ではリッターあたり40円の補助金が出ているようです。

今はガソリン1リッターあたり170円程度の価格ですので、補助金がなければ210円になっていることになります。

このためにどれほど多額の金が費やされているか。怖ろしいほどです。

他の物品についても同様の方策が考えられているようですが、さすがにすべてのものに金を注ぎ込むということは無理でしょう。

 

そもそもこの物価上昇は一過性のものなのか。

この先何か月かすれば元通りになるからそれまでの我慢だと言えるのか。

そんなことはないでしょう。

穀物関連はウクライナ紛争が完全に解決すれば徐々に戻るかもしれません。

しかし紛争自体まだその先行きは不透明であり、短期で片付く見通しなど全く立ちません。

エネルギー関連に至っては、ロシア産の禁輸は確かに大きいでしょうが、それ以前にエネルギー構造の変革と称しての大変動のあおりという意味が大きかったのでは。

そもそももはや大幅に自然エネルギー比率を増やしているはずのヨーロッパでなぜロシア産エネルギー禁輸ができないのか。

実際にはそんな状況ではないということを示しているのではないか。

 

それならば、ウクライナ紛争の解決ということもさることながら、ほんとうは「エネルギーについてのあるべき姿」をしっかりと固めることが必要なのでは。

これは前から繰り返しているように、「エネルギーへの依存度をどんどんと下げていく」ことが不可欠だということです。

そのためには今のような補助金漬けとするのではなく、なるべくエネルギーを使わないように誘導する政策が必要なのでは。

ただし、そこでは「社会の大幅な変革」が必要となります。

自然エネルギー」を少々使う程度でも「社会の大幅な変革」などと言っていますが、それとは比較にならないほどの変革が必要です。

 

円安の進行といった為替の問題はこれまでも「経済の底力」と「投機」の関係で語られてきました。

日本経済は実際には力があるにも関わらず、投機筋の思惑で為替が動かされるとされてきました。

しかしどうやら現在の円安は日本経済の実際の力が出ているだけなのかもしれません。

経済力とはやはり製造力、そして販売力でしょう。

どちらも空洞化してしまえば日本経済には力などなく、ただ「資本」だけは溜まっているがゆえに「投機力」だけはあったということでしょうか。

それならば、今のような円安レベルもその経済力を忠実に表現しているだけなのかもしれません。

 

しかしともかく「日米の金利差」が円安要因ならばそれを縮めるわけにはいかないのか。

日銀の一つ覚え総裁は「金融緩和政策を変えるつもりはないので金利は上昇させない」と言い続けています。

今言われているシナリオ通りならば、これでは円安は止まるはずもなくさらに進行しかねません。

日本でもインフレとしか言いようのない状況になれば金利を上げるのか。

そうなれば投機筋の円売りも一段落、円安に歯止めがかかるかもしれません。

しかしそれで「資金供給が途絶え景気が低下する」のを恐れているのでしょうか。

どうもここが政府日銀の判断の不可解なところです。

資金が不足するために経済が活性化しなかったのか。

どう考えてもそんなことはありそうもありません。

日銀がマイナス金利で吐き出した貸し付けはどこへ行ったのか。

それが日本の経済活性化などには使われていなかったからこそ、景気低迷していたのでは。

となれば、金利を上昇させたからといって実体経済には何の関係も無いということにもなりそうです。

ただし、国債金利が上昇することは国にとっては償還費用が上昇することになるのでしょう。

しかしそれもほとんどが日銀保有であれば関係ないかもしれませんが。

 

とにかく、あの政府と日銀では今後も底なし沼へ引き込まれる一方ということになります。

デフレデフレと言いながら低値安定はしていた日本経済ですが、大きく揺さぶられ弱者はさらに苦しめられることになるのでしょう。