第二次大戦に至る戦争の時代に、日本は画家たちを動員して戦争を描かせました。
彼らは戦地に従軍し見た光景を絵にしていきました。
しかし戦争に負けた後はそれらの絵は顧みられることもなくなり、さらに画家も戦犯になるという噂も流れたために闇に葬られた絵も多かったようです。
その後も反戦という雰囲気が強い中ではそのような戦争画を評価するどころか、紹介するだけでも反発を受けるような時代が長く続きました。
このような戦争画について、美術評論家の椹木さんが画家で戦争に関する絵も描いている会田さんを招き、あれこれと対談をしてまとめたのが本書です。
戦争画を見ることができる場というのはまだほとんどありません。
しかし、いくつかは紹介されているので見た覚えはあります。
華々しい勝ち戦を描いたような絵もありますが、兵士たちの日常生活を描いたようなものも多かったようです。
画家の多くは西洋画家で油絵が多いのですが、中には日本画家も何人かは居たようです。
絵具などの画材はすでに品不足となっており従軍画家でなければ入手できないという状況でもあり、軍部への協力をしなければ画家活動も続けられないことになっていました。
なお、戦地を訪れて戦場の光景を見たと言ってもやはり最前線にまでは行かなかったので、実際の戦闘場面を描いているということはないようです。
従って、戦死者の状況などはあまり描かれることはありません。
そこには軍部の意向もあり、あまり悲惨な場面などを見て戦意が落ちることを恐れていたようです。
敗戦後は噂のような戦犯裁判への召喚ということはなかったのですが、多くの画家たちはその話は封印し無かったかのように振る舞いました。
そのためか、戦後すぐには多くの画家は裸婦像の製作に取り組み、異様なほどの状況だったようです。
本書には多くの戦争画が挿入されています。
戦争遂行にすべて向かって行った時代ではあったのでしょうが、中には戦意高揚には全くつながらないような絵もあり、画家たちの考えも色々だったようです。