著者の吉玉さんは長く山小屋で働いた後にライターとなり、山ガール関係の本も出しているということですが、山では迷ったことがなかったのに町に戻ってきたら自分の行きたいところがどこか分からないという極度の方向音痴になってしまったそうです。
それを知った出版社から、「方向音痴をなおす」という企画が持ち込まれ、そこの編集者とともに自分の方向音痴がどの程度のものか、そして色々な専門家に治す方法があるか聞いて回るということを始めました。
とにかく、吉玉さんの方向音痴はスマホで地図アプリ(グーグルマップ)を使ってもなかなか目的地にたどり着けないほどだということです。
アプリを見て目的地を表示させても、まず右に行くか左に行くかがよく分からない。
さらにアプリのナビ機能を使っても、ナビは「そこから南に進む」などと指示しますが、「どっちが南か分からない」ために使い物にならないそうです。
まず、現状がどのようなものか分析しています。
「地図をくるくる回してしまう」「北が上じゃない地図を見てもそのことに気づかない」「カーナビやアプリのナビ機能で画面を拡大縮小するとその前の画面との関連が分からなくなる」「最初の一歩を勘で歩き出す」「ショッピングモールで同じ店にばかりたどり着く」「太陽を当てにする」などなどの特性があるようです。
そこで、編集者の中村さんと共に、東京のあまり行ったことに無い街に行き、そこで中村さんの指定する場所にたどり着くという実験をします。
方法としては、マップアプリのナビ機能を使う、紙の地図を使う、という二つの方法をやってみました。
マップアプリではまず「駅で待ち合わせするにもどの改札口か分からない」という問題が最初に発生します。
アプリによっては詳しいものもあるようですが、東京のターミナル駅などでは「東口・西口」と言ってもそれぞれ3つ以上もあるようなところがあり、それのどこからスタートするかで後が続かないところもあります。
また札幌のように碁盤の目状の道路なら判り易いのですが、東京でも直角でない曲がり角、徐々にカーブする道路などがあり、アプリではそれが分かりにくくなるようです。
二回目に「紙の地図」に従って向かうという実験をしたのですが、かえってその方が迷わなかったようです。
それがなぜかと言うと「紙の地図は勝手に動かないから」で、マップアプリは自動的に方向が変わったりするため、それが分からなくなる原因になるようです。
そこで「専門家に聞く」として、認知科学者の新垣教授、地理作者の今和泉さん、地形愛好家の皆川さんに話を聞いて回ります。
やはりさすがに認知科学者はこういった問題には強いようです。
迷わないコツをいくつか教えてもらいました。
・「地図」と「現実の景色」を照合する際には目印を2つ以上置く
・地図もしくはストリートビューで予習する
・地図は回してもいい
・視点を上に移動させ町を俯瞰するイメージ等々です。
これでさすがの著者もかなり成長することになります。
この結果、吉玉さんの方向音痴は少しは良くなったようです。
しかし「頻繁に現在地を確認する」「常に方角を意識する」「脳内に地図を思い描く」ということを常に意識して動くことで、確実に良くなるということです。
実は、「方向感覚の良い人」というのはこういったことを習わずにも自然に行なっている人だということです。
確かにそうなんでしょうね。
私は方向についてはまったく不自由は感じないと思ってしましたが、知らない所に行くときは嫌というほど予習をしていきます。
まあそれが良いのかどうか、たまには迷ってみるのも面白いとは思うのですが。