爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「お国柄ことばの辞典」加藤迪男著

「お国柄ことば」と言っても、「方言」を扱ったものではなく、その地方独特の言い回しやことわざといったものを集めたものです。

 

たとえばよく言われるものでは「京の着倒れ、大阪の食い倒れ」といったようなもので、地名を入れてそこの住民の特徴を表すと言ったものや、「天山鉢巻き多良頭巾」のように、気象の特徴を表した言葉(これは佐賀県で天山に鉢巻き状の雲がかかったり、多良岳に頭巾をかぶせるような雲がかかると雨が降るということ)が対象となっています。

 

地方ごとに分割し、さらに都道府県ごとに示されていますが、このような言葉は江戸時代に起源を持つものも多いと思いますが、その場合は同じ県でも旧藩のよって大きな差があると思いますがその点は細かくは記されていないようです。

 

なお、地方ごとと言ってもやはり著者の調査が行き届いたところとそうでもないところはあるようで、掲載されている件数にかなりの差があります。

「九州・沖縄」とひとくくりにされていますが、沖縄はもともと別言語にしても良いほどのところであり、これをまとめてしまってしかも沖縄の掲載件数が多いのでは、九州の他県の扱いはかなり薄いものとなってしまっています。

 

九州在住の私としてはちょっと不満。

 

冒頭にも紹介した「京の着倒れ、大阪の食い倒れ」という言葉は、実は全国各地方に見られるようです。

(関東・上方)(越後・上州)(甲州・信州)(信濃・下総)(尾張・美濃)(備前因幡)(豊前・長州)(伊予・土佐)等々、(どっちがどっちかは想像に任せます)

おそらくは、京大阪の例があってそれになぞらえて言うようになったのでしょうか。

なお、「着」「食い」以外にも「飲み」やら「議論」やらいろいろと言われています。

 

また、「東男に京女」のように「○○男に○○女」という用法も全国に多数あるようです。

ただし、こちらの場合は冷静な比較ということではなく、○○男の方の地方が、○○女の地方を貶めて言うという意味が含まれています。

つまり、「○○女」の地方より自分たちの方が優れており、男は相手にならないと言いたいという下心があるということです。

 

都会の遊びに通じた人間を「通人」と呼びますが、これは江戸の呼び方だったそうです。

「京には粋、江戸には通」と言ったそうで、江戸時代の京の遊里で「粋」という言葉が起こったのですが、江戸では同じような人の事を「通」と呼んだということです。

 

 

さて、恒例の揚げ足取り。

熊本のお国柄ことばとして「いきなり団子」が挙げられており、その説明として「イモの輪切りに小麦粉をつけて油で揚げただけの揚げ菓子」と紹介されています。

しかし、熊本ではこれは「イモの輪切りに小麦粉などの生地をかぶせて蒸したもの」です。

最近ではイモに小豆餡を加えて蒸すという菓子になっていますが、「揚げ菓子」ということは聞いたことがありません。

 

さすがに日本各地で色々な言葉があるものです。