「ことばあそび」というものは、どこにでもあるのでしょうが特に日本語では多いように感じます。
なぞなぞ、縁語、掛詞、折句、いろは歌、さらに、判じ絵、回文等々。
どうやら古くは万葉集の中にもそれらしきものが見られるようです。
そういったことば遊びの歴史を、万葉集からなぞなぞの宝庫と呼ぶべき中世、百花繚乱とも言える江戸時代、さらに幕末・明治までたどります。
ただし、著者の今野さんは日本語学者の専門家であるため、やたらに原文提示が多く、ちょっと読みづらいという印象でした。
あまり一般人が楽しく読めるというものにはなっていないようです。
万葉集にも言葉遊びが見られるというと意外かもしれません。
しかし、「たらちねの ははが かうこの まゆごもり いぶせくも あるか いもに あはずして」と現在読まれている和歌の表記(もちろん全部漢字)を見ると、どうしても「ことばあそび」をしていると考えられるそうです。
このなかで、「馬声」と書かれている部分は「イ」、「蜂音」は「ブ」、と表記されています。
ウマの鳴く声は今は「ヒヒーン」ですが、当時は「イイーン」であったようです。
さらに蜂の飛ぶ音は「ブンブン」
それをわざと表記に用いるところなど、言葉遊びそのもののようです。
中世の有名な文学の中にも「なぞかけ」が頻出してます。
徒然草にもなぞかけが出ているということが知られています。
室町期の歌壇で活躍し、従一位権大納言にまでなった中御門宣胤の日記にも「なぞなぞ会」が開かれたという記述があります。
そうそうたる面々になぞなぞを作れという仰せをしたのが御土御門天皇自身だったそうです。
江戸時代は言葉遊びが百花繚乱と言えるほどに繁栄しました。
なぞかけ、判じ絵、無理問答等々、多くの史料が残っており、当時の雰囲気を伝えています。
現代はそういった遊びを許すような余裕がなくなってしまったのでしょうか。
まだ明治頃には「英語都都逸」といったものもあったのですが。