爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「アリストテレス 生物学の創造 上」アルマン・マリー・ルロワ著

アリストテレス古代ギリシャの哲学者ですが、自然の観察も行い、生物の特徴を記載した「動物誌」などの著作もあり、生物学や博物学の始祖ともみなされています。

 

その後、紀元1世紀にはローマで大プリニウスが「博物誌」を著しましたがその内容は色々なところからの伝聞であり、実証してものではありませんでした。

それに比べてアリストテレスは明らかに自ら観察し(動物などは解剖し)分かる範囲で書き残していたと見られます。

その点からもアリストテレスを「生物学の開祖」と言っても良いと考えられます。

 

アリストテレスの著作の中では、生物を観察するばかりではなく、その類似性や相違を勘案して分類するということも行われていました。

これは18世紀にカルロス・リンナエウス(リンネ)が近代分類学を立ち上げる基礎となったものとも言えます。

 

アリストテレスは若い時にアテナイプラトンの弟子となりその教場で過ごしました。

しかし、プラトンが亡くなった後、その跡継ぎはプラトンの甥の(おそらく能力はアリストテレスより劣っていた)スッペウシッポスになってしまったため、アリストテレスアテナイを離れることとなりました。

その後、トロイア地方の小都市アッソスの僭主、ヘルミアスの元に身を寄せるのですが、ペルシア軍がヘルミアスを殺害すると沖合のレスボス島に移ります。

そこで動物や植物を対象とした自然学の研究を始めることになります。

 

アリストテレスは110種の動物の内部構造について言及しています。

彼がその動物を解剖して観察したのかどうか。

その可能性もありますが、確証は得られません。

その「動物誌」などの著作には現代の動物学の本なら必ずある「図解」が無いためです。

ただし、初めから無かったわけではなく、文中に「解剖学」という本について言及しているところがあり、その中で図解していると書かれています。

おそらく、図だけを集めた本を作成していたのですが、失われてしまったのでしょう。

 

動物の構造やその各部の働きなどを考えていくと、他の生物との関係ということが分かってきます。

アリストテレスの著作を読んでいくと、彼が史上初めて「比較動物学」を作り上げたということが分かります。

動物の脚を見れば、そこに指があるもの、その指が偶蹄であるもの、奇蹄であるものが見られることは分かります。

魚類の腸を見れば、幽門垂という付属器官があるのですが、それが種により数や位置が違います。

それがどうしてそうなっているのか、それを考えることを始めました。

 

現代の生物学は大きく発展しました。

しかしその始まりははるか昔のアリストテレスのところにあったということです。