爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

なぜ変異ウイルスは感染力が強いのか

新型コロナウイルスの変異株が次々と現れ、いずれも感染力が強くなっているということでこれまでのものに置き換わっています。

なぜそんな都合の良い変異株が出来て来るのか、不思議に感じる方も居るかもしれません。

 

その辺の事情を少し、分かりやすく?説明してみたいと思います。

なお、私の知識はバクテリアに偏っておりウイルスはあまり詳しくないため、実際は少し異なることがあるかもしれませんが、大まかなところには間違いは無いでしょう。

 

①変異の原因は遺伝子の複製ミス

生物の遺伝子はDNA(デオキシリボ核酸)またはRNA(リボ核酸)であり、これはウイルスや細菌から動物植物に至るまで共通です。

この遺伝子が「複製」という働きで増えていくのが生命活動です。

この複製ではまったく同じものが作られなければいけないのですが、少ない確率ながら失敗してしまうことが起こります。

これが変異です。

 

②遺伝子の変異はたいていは生命にとって不利

遺伝子の複製ミスで変わってしまうと、それを使ってタンパク質や酵素などを作り出す生命活動も何かが変化します。

その変化のほとんどは生命にとって不利な変化であり、すぐにその遺伝子と細胞は死滅します。

しかし、ごくまれに生命活動にとって有利な変化をすることがあります。

 

新型コロナウイルスにとっては感染力増強が有利な変化だった

感染が広がりだしたコロナウイルスにとって、餌?となるべき人間が目の前に溢れているような状況は天国のようなものだったかもしれません。

しかし、少し時が経ったころ、急にまだ感染していない人間の数が減少していきました。

人間たちが感染対策としてロックダウンなどを実施したせいです。

そうなると、ウイルスにとっても生存競争が起こります。

色々な性質の変化が関わってきますが、「感染力が強くなる」変化を起こしたウイルスが人に感染し増殖しやすくなります。

そのため、あっという間に感染する株の種類が感染力増強の変異株に代わってしまうわけです。

 

このように、一気に感染が広がった状況ではすでに多数の変異ウイルスが発生していると考えられますが、②で書いたようにほとんどはすぐに死滅してしまい、生き残っていたとしてもそれがすぐに優先的に増殖するとは限りません。

その変異の性格により感染に有利かどうかが決まり、その後の感染拡大するかどうかも決まってきます。

例えば感染した場合の人間の死亡率の変化や、起こす症状の変化もあり得ますが、この変異株が優先して増えて来るかどうかは環境の変化があるかにかかってきます。

 

④この先あり得る変異の方向は何か

今、ウイルスの増殖に影響を与えているのはワクチン接種の普及です。

ワクチンによりこのウイルスに対する免疫力が増強されウイルスが体内に侵入したとしても増殖することができないようになってきています。

これからウイルスの変異がどのような方向に進むか。

それはやはり「ワクチン耐性」の獲得でしょう。

ワクチンの作用を考えれば、これをくぐりぬけるためのウイルス側の対策も非常に難しいことは間違いありません。

しかしどれほど困難であっても、ウイルスはいつかはその性質を変異で獲得することになるでしょう。

それを防ぐためには、全世界で一気にワクチンを接種しワクチン耐性の変異が出現しないうちにこのウイルスを絶滅させることが唯一の手段でしょう。

その意味で愚かな対応だったのが、一番感染拡大が激しい所にワクチン接種を優先するのではなく、欧米のワクチン生産国が自国での接種を優先し、多くの途上国で接種を遅らせていることです。

ウイルス変異は感染拡大する状況では必ず起こります。

それが激しいほど変異の種類も多くなり、いずれは強力なワクチン耐性変異株が出現するかもしれません。