リスク学の現役研究者、永井孝志さんのブログを注視していますが、「リスクの比較の方法解説」という、リスク学の中心とも言える手法の解説がされていました。
「リスクの比較」がなぜ大切か。
リスクというものを避ければ良いのであればどんなことをしてもそれを実施するということになりますが、そういった例は実際にはほとんどありません。
リスクを避けたつもりが、かえってより大きなリスクを背負い込むことになります。
これを「リスクのトレードオフ」と言うのですが、今回の永井さんの記事ではそこまでは取り上げていません。
リスク比較ということの、最初の考え方の解説ということで、このシリーズは今後も続いていくということでしょう。
まず、「リスクを比較する」ということの意味から考えさせられます。
実は、リスクというものの数値化といったものも、完全に固定化したものではなく、色々な場合の色々な状況でかなり異なるものが出てきます。
永井さんの挙げた例で、交通事故の死者数という統計値であっても、その何を取り上げて、何と比較するかによってさまざまな切り分けをしなければ求める目的には到達しません。
・交通事故死の定義(事故発生から24時間以内に死亡)が変わるとリスクも変わる
・交通事故も乗用車とバイク等移動手段で分ければリスクが違う
・年代別でもリスクが相当違う
・地域で分けてもリスクが変わるまた、死亡率以外にも、損失余命を計算したり、非致死的影響も含めたDALYなどのリスク指標も計算できます。さらにこれ以外にも、死者数を割る分母を「年間」という時間単位ではなく「移動距離」ごとに変えたリスクも計算できます。「移動距離」ではなく「移動時間」あたり、「移動1回」あたり、のリスクも計算できるでしょう。
交通事故死者数といった、比較的確実と思われる値であってもこのように色々な見方によって解釈も変わってきます。
その他の多くのリスクの対象ではもっと曖昧なものも多いのでしょう。
リスクの比較ということを考える場合は、かなり離れた分野のものを比較しなければならないという状況も多いでしょう。
そのためにも、広い範囲の事例を知らなければならないようです。
その一つ一つに分野に詳しく研究を重ねている専門家がいますが、彼らが他分野との比較を妨げることもあるようです。
それよりも、多くの分野にかけての全体像をとらえることができることが重要なようです。