リスク学者永井孝志さんのブログは、リスク学というものを通して様々な社会的な危険に対して多くのことを教えてくれるもので、非常に参考になります。
先日起きた保育園の送迎バスでの園児が取り残されて熱中症で死亡したという事件は社会的にも大きな関心を集めました。
それが昨年も起きた事件と同様のものだったということもさらに世論を刺激したことでしょう。
しかしその対応として政府や自治体が行っていることは「送迎バスの管理法」と言ったものが多く、根本的なリスクを見るという態度とは程遠いものです。
これはこの前の知床の遊覧船事故の対策と同様で、その事故の危険性のみを取り上げてそれに対処すればよいと言った皮相的な対応と言えるでしょう。
その時にもこのブログで永井さんが指摘していました。
安全のカタチ1:事件や事故が起きてからその結果をもとに法律などによる規制を行う
安全のカタチ2:事前にリスク評価を行い、リスクが許容レベル以下であることを示し、そのことを社会に受け入れてもらわないと実用化されない。今回の対応は典型的な安全のカタチ1であって、逆に言えば今までリスクが放置されてきたことになります。もっと言えば、直近のショッキングな事件のことで頭がいっぱいになり、他のリスクにまで頭が回らなくなります。そのうちに見過ごされている別の要因で事故が起こり、またそのことしか見えなくなる、を繰り返してしまいます。これが安全のカタチ1の欠点です。
このような視点から、今回のブログは「保育施設において死亡に至るような事故がどのくらい起きているか」といったところから見ていきます。
すると、送迎バスへの置き去りによる死亡事故は今回と昨年のもの以外には2007年に一件あったということです。
しかしそれ以上に保育施設においては様々な原因による死亡事故が多発しています。
保育施設での安全ということを考える上では送迎バス対策以上に考えなければならないことが多数あるということです。
保育施設での死亡事故は報告されているものだけでも毎年10件以上発生、2004年から2014年までの間に163件起きています。
ただし、この期間ではまだ無認可保育園は報告義務がなく(2017年より義務化)実数はこれよりかなり多いかもしれません。
というのは、死亡事故の発生には次のような特徴があるからです。
・0歳児の事故が過半数
・認可外保育園での事故が約7割
・特に睡眠中の事故が多い
もちろん事件性のあるものは少なく、原因不明とされるものがほとんどなのでしょうが、怖ろしい実態だと言えます。
保育園での死亡事故は、睡眠中以外にも、食事中、プール水遊びといった場合に起きていますが、いずれも遠因としては人手不足で監視不十分があるのでしょう。
記事の後半では実数を示してリスクの大きさを表示しています。
特に無認可施設での事故のリスクはかなり大きいことが分かります。
私の孫も現在保育園通園中、公認の市立保育園ではありますが、ちょっと元気の良すぎる男の子なので心配はあります。
しかし保育園というものが無ければ男女雇用機会均等法などもあり得ません。
アメリカ製の兵器購入に何十兆も掛けることなく、国民の暮らしと生命を守るには保育園の整備にごくわずかな金額を回す方がはるかに効率的だということを理解してもらいたいものです。