図書館の生物関係の書籍を置く棚にあったので、生物学の本だと思ったのですが、どうもそれだけではなかったようです。
副題にあるように「ラマルク説で読み解く」と、獲得形質遺伝説(要不要説)を唱えたラマルクの学説による進化論も含まれているのですが、それだけでなく人類の文明が始まってからの人類社会の変化も進化であるということで、それがごく短期間で行われたことから、表題の「なぜ短期間で進化できたのか」という言葉になったようです。
もちろん、生物学的な進化と文化人類学的な進化(これを進化と言うべきかどうかは問題ですが)とは関係ないものですが、そんなものは物ともせずに論じています。
著者の杉さんは、医学部の元教授で生理学がご専門ということで、進化学者ではないようですので、それで思うがままに書き連ねることもできたのでしょうか。
現代の遺伝学では、遺伝子の変化がそのまま自然淘汰に結びついて進化していくなどと言う単純な話は無いと思うのですが、そこを捉えて「獲得形質遺伝が実情を示している」と言われても困ってしまいます。
遺伝子の後天的な変化が遺伝すると言っても、核酸のメチル化などが遺伝するという最新の理論を言っているわけでもないようです。
まあそれでもそういった生物学的な話の本書前半はまだ余裕をもって読むこともできるのですが、人類文明の進化を論ずる後半部分は何を言っているのかちょっと判断しにくいものもありました。
天才が続出した西洋文明がそのおかげで他の文明に優先して発展し、世界を制覇したということのようですが、そう単純化するだけで良いものかどうか。
そんなわけで、生物学的進化の方も文明の進化の方もちょっとどうなんだかという論旨であったと判定します。