中国古代を舞台とする宮城谷昌光さんの歴史小説は、最初は春秋戦国時代を題材としたものが多かったのですが、徐々に漢や三国時代へと幅を広げてきました。
中でも三国時代は三国志を始めとして多くのものが読まれており、宮城谷さんも三国志を直接扱ったものも書かれています。
今回は同じ時代ではありながら、よく読まれる三国志とは少し違った観点から見ている「後漢の名臣」列伝を読みました。
劉備の蜀、そしてそのライバルとしての魏や呉が主人公の三国志を読んでいると、その前の王朝の後漢というものはあくまでも引き立て役、腐敗しつくした王朝で倒れるのも当然といったような扱いをされているとも言えるでしょう。
そこに仕えていた多くの人々も、腐敗、無能、せいぜい不運といった描かれ方のようです。
しかし、それまで数百年の間中国全土を支配していた漢王朝には、それなりに優れた人材も多く、たまたま世の流れによって幕が引かれ消えていったとも考えられます。
そういった中から、この本では、何進、朱儁、王允、盧植、孔融、皇甫嵩、荀彧の7人の物語が収められています。
いずれも名前だけはこれまでの三国志関連の本などで見ていますが、それほど「名臣」といった扱いはされていないようです。
しかし、それぞれの人々の若年期から青壮年、その活躍やその後の運命など見ていくと名臣たる由縁もあり、またその運命の過酷さも感じられ、後漢末期から三国時代という激動の時代に自分や家族一族のため奮闘するのがどれほど大変な事かというものを見せてくれるようです。
「別の見方」をしてみるということは、歴史であっても現代であっても必要なことなのでしょう。