爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「トコトンやさしい アミノ酸の本」味の素株式会社編著

アミノ酸という生物にとっては非常に大切な成分について、アミノ酸各種の製造では日本ではトップ企業である味の素株式会社が様々な方向からやさしく解説をした本です。

 

アミノ酸といって何が思い浮かぶか、アミン酸飲料といったものであったり、あるいはタンパク質というものはアミノ酸からできているということであったりするかもしれません。

また、個々のアミノ酸の名称を聞けば、グルタミン酸では旨味、グリシンといえば眠りといった話題を思い出すこともあるでしょう。

 

とにかく、アミノ酸というのは生物にとってはもっとも基礎的な成分とも言えるもので、ありとあらゆる生命活動と関係していると言えます。

 

人間の身体は20%がタンパク質ですが、そのタンパク質の種類は10万種以上あるそうです。

しかし、そのタンパク質はたった20種類のアミノ酸からできています。

アミノ酸が2個から数十個つながったものを「ペプチド」と言い、さらに数百個以上のアミノ酸がつながったものがタンパク質です。

 

多くのアミノ酸は人間の身体の中では作ることができないため、食物として摂取しなければなりません。

これを「必須アミノ酸」というのは聞いたことがあるでしょう。

これにはイソロイシン、バリン、スレオニンといったアミノ酸が含まれます。

ラニンやアルギニン、グルタミンといったものは、一応体内で合成することができるため「非必須アミノ酸」と呼ばれますが、これらも体内で重要な働きをしますので、体に必要ないということではありません。

また、場合によっては合成量が不足するために食物として摂取する必要があります。

 

アミノ酸は主に炭素(C)、水素(H)、窒素(N)、酸素(O)と種類によってはイオウ(S)などからできています。

その中で、かならずアミノ基(NH2)とカルボキシ基(COOH)という構造の部分を含むのが特徴となっています。

このアミノ基とカルボキシ基が結合する「ペプチド結合」という構造を作って様々なアミノ酸がつながり、それがどんどんと伸びていくことでできるのがタンパク質なのです。

 

アミノ酸を工業的に製造するというのは、味の素株式会社が専門にやっていることですが、抽出法、合成法、発酵法などの方法があります。

最初は小麦や大豆から加水分解法によって取り出すという抽出法で行われたのですが、より効率的に実施するために発酵法が開発されてきました。

グルタミン酸を作り出すのはコリネバクテリウムという細菌で、最初に発見したのは協和発酵工業の研究者でした。

他のアミノ酸も作り出す微生物を探し出して発酵で生産できるようにしていき、日本はアミノ酸核酸の発酵生産では世界トップクラスの実力をつけていきました。

 

アミノ酸はうま味調味料などとして摂取されています。

ただし、料理に含まれる程度であればそれほど大量に食べることはあり得ないのですが、最近ではいろいろな効果を期待して「サプリメント」として摂取することが増えてきました。

アミノ酸として体内で処理できる量は一日に250g程度と言われています。

料理に含まれる量であればこの量を越えることはありませんが、サプリ摂取では摂りすぎも起きる危険性があります。

適正な摂取をしたいものです。

 

医療用途として、食事ができない患者向けの「栄養輸液」にもアミノ酸が含まれています。

これにはタンパク質を使うこともできるのですが、タンパク質はアレルゲンとなる危険性があるために、アミノ酸を使用する方が良いそうです。

現在では患者の病態に合わせていろいろな種類のアミノ酸輸液が作られています。

ただし、グルタミンとアスパラギンは不安定になるために入れられないとか。

また糖質やビタミン・ミネラルもあらかじめ混合しておくことができないため、必要なものを数種類一緒に包装しておき、用事に混合して使用する方法が取られているそうです。

 

非常に分かり易く書かれているものと感じました。

ただし、CだのNだのといった化学記号が出てくるのは仕方ないところですので、その程度は我慢して読んでいただければ、相当役に立つのではないかと思います。