FOOCOM.NETの専門家コラムで、残留農薬検査を長年担当してこられた斎藤勲さんが、最近週刊新潮に掲載され一部で論議を呼んでいる紅茶茶葉での残留農薬検出について書かれています。
www.foocom.net元ネタは、北海道大学の池中准教授という方が発表した論文のようですが、それを週刊新潮で取り上げ、国産紅茶茶葉ではネオニコチノイド系農薬が検出されているのに対し、スリランカ紅茶(市販の茶葉を使用したようです)には不検出であったということです。
そこから話が膨らみ、スリランカ紅茶では他の農薬も検出されず、国産紅茶は農薬まみれといった風に言われているとか。
斎藤さんは残留農薬検査では長年の経験をお持ちですので、この話のおかしな点はすぐに分かりました。
ネオニコチノイド系農薬とは、農薬の中では少々特殊な性質を持っており、非常に水溶性が高いというものです。
他の系統の農薬はだいたい水溶性が低く、脂溶性が高いので、その抽出・分析もそれに適した方法を取り、有機溶媒で抽出して分析されます。
しかし、ネオニコチノイドではその方法では抽出されず、この論文では水で抽出という特殊な方法を使っています。
当然ながら、この方法では他の農薬は残留していたとしても全く抽出されませんので、一見なにも無いかのように見えます。
なお、別の論文でスリランカの大学の研究者がセイロン紅茶の残留農薬分析をしたものがありますが、それでは一般的に有機溶媒のアセトニトリルで抽出し、GC/MS(ガスクロ質量分析)という分析機器を用いる方法で実施され、多くの農薬が検出されているそうです。
ネオニコチノイド系農薬はミツバチの消滅にも関わるとか言われることもありますが、冷静な判断をしたいものです。