宍道湖のワカサギ漁獲量が激減した時期が、ネオニコチノイド系という農薬が普及した時期と一致するということで、その因果関係を主張する学説を発表した研究者がいたということから、話題になっています。
それについて、FOOCOM.NETの専門家コラムで斎藤勲さんが様々なデータを取り上げて解説しています。
東京大学の山室教授という方が論文を発表したと言うことで、TBSでも番組で取り上げたようで、いまだに「東大ブランド」というのは大きな力があるものと再認識しますが、まあそれは置いておいて。
山室さんの推論では、1993年にネオニコチノイド系農薬が普及しだしたために、動物プランクトンや昆虫類が減少しそれを餌とするワカサギも減少したということです。
しかし、その「漁獲量」の値自体がどうも正確とは言い難いもののようです。
山室教授の論文に引用されている漁獲量データは国の農林統計によるものですが、これとは別に島根県が宍道湖漁協のデータを基に作成した表を見るとまったくイメージが違うようです。
これは私が見た別の魚種に関する文献でも同じような話があり、「漁獲量データ」で魚の存在量を示すというのは誤差が大きくなりすぎるという点に注意しなければならないようです。
漁獲量には魚の存在量以外にも多くの変動量が作用してくるというのは、漁業関係者以外の人からは盲点なのでしょうか。
さらにこの時期には水温の上昇、河川からの土砂流入など環境変化も起きており、それらの影響も無視できません。
斎藤さんの文章では、かなりオブラートに包んで書いていますが、ちょっとこの論文の程度は低いとはっきり言っても良いのでは。
単純な話ですが「因果関係と相関関係の混同」というものに過ぎないようです。