毎日新聞記者で、以前から食品や環境に関して科学的にもしっかりとした記事を書いておられた小島正美さんが、少し前から「FOOD NEWD ONLINE」という一般向け解説を書いていますが、そこで「発がん性物質」について解説していました。
「発がん性物質」と聞くと誰もが恐ろしいものという感覚を持つでしょう。
以前よりははるかに治癒する可能性が高くなりましたが、それでも癌は不治の病と言われていた時代はさほど昔ではありません。
しかも、通常の毒物と異なり、発がん性物質には閾値が無く微量でも発がん作用があると言われていたために、ほんのわずかでも検出されたらアウトという時代が続きました。
その後、他の多数の物質(天然、人工を問わず)に発がん性があるということも分かり、また癌化した細胞を取り去る身体の働きも分かってきています。
そういった状況下で、小島さんは特に除草剤のグリホサートをめぐる欧米の動きを取り上げ、分かり易く解説しています。
ここで出てくるのが、世界保健機関(WHO)の専門機関、国際がん研究機関(IARC)、そしてそこが発表している「がんのグループ分類」です。
グリホサートはこの中で、グループ2Aに分類されており、「おそらく発がん性あり」ということになっています。
このグループ分けとは次のようなものです。
分類はグループ1(発がん性あり)、グループ2A(おそらく発がん性あり)、グループ2B(発がん性の可能性あり)、グループ3(分類できず)、グループ4(発がん性なし)の5つのランクがあります。グループ1からグループ2Bまでは、どれも「発がん性物質だ」と言えば、全く間違いというわけではないので、週刊誌はこれを一括りにして「発がん性物質だ」と書くわけです。
これを見ると「グループ2A」とは発がん性の強さが上から2番目というように感じますが、実はそうではないということを説明されています。
小島さんの説明の方がコンパクトで分かり易いのですが、とにかくこの評価は「発がんリスクの大きさ」を示すのではなく、単に「それを示す証拠の強さ」だけを示しているというわけです。
あまりこの表全体を見る人も居ないのかもしれませんが、ほかに同じグループ2Aとされているものには、
グループ2Aには、フライドポテトなどに含まれるアクリルアミド、65度以上の湯、紫外線、豚肉や牛肉(レッドミートという。鶏肉はホワイトミートで別)、職業としては、シフト勤務、美容・理容の従事なども分類されています。
といった具合で、確かに最近は「がんになる可能性がある」と言われているものですが、特に危険とは考えられてはいないものでしょう。
なお、グリホサートについては本当に発がん性があるかどうかについても他の学術団体には疑問視しているものもあります。
「国際機関の認定」などというと、それだけでもう錦の御旗か水戸黄門の印籠のように感じる人も居るかもしれませんが、それほどのものではないということでしょう。