こちらの地方新聞に詩人の伊藤比呂美さんが定期的に随筆を書いていらっしゃいますが、今回は道路沿いの巨木の伐採についてです。
伊藤さんは「人と環境」という観点から書いているのですが、私はそこから行政の姿勢の問題点を感じ取りました。
新聞記事ですが地方新聞でネットにすべて記事を上げるわけではないようなので、中身も要約しておきます。
伊藤さんが歩く道の近くに、クスノキの大木があったのですが、これを近日中に伐採するという看板が出ました。
そして、何日か後には伐採は当分延期するという看板が出ました。
この顛末を聞いたところ、市役所に1件の電話があり「老木で倒壊するかもしれないから危険だ」というので伐採することにした。
ところが看板が出てから数日後に「あれは御神木だ」という1件の電話があったので棚上げにしたというものです。
このような事例はそこかしこにあります。
他にも年月を経た巨木が住民の要望(それもわずかな)であっという間に切られたということがありました。
その古木があることで心が安らぎ癒されていた人々は、役所に対して何も言うことはありません。
それが数千人、数万人居たとしても、ほんのわずかなクレーム電話で切り倒そうとしてしまうのが行政です。
しかし、今回その木を救ったのも「ご神木だ」という1件の電話だということが皮肉です。
たかが木の一本のために、住民の声を聴くなどという手続きを取るのも大変なのでしょうが、そこに環境軽視の行政姿勢が見えます。
これは環境に限らず他の行政と住民の問題でも同様でしょう。
声の大きな人、頻繁に声を上げる人の言い分にどうしても左右されがちです。
これは多数決ですらありません。
多くの人が快く思わないことでもそういう方向に進んでしまうということは多いようです。