爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「血液1滴で13種類のガンを発見」東芝が発表したけれどNATROMさんによれば非常に疑問。

「血液1滴で13種類のガンを発見できる」装置を東芝が開発しているという発表がされ、テレビのニュースでも報道されて、素晴らしいというコメントが語られていました。

www.fnn.jp

しかし、あのNATROMさんによれば、それほど「素晴らしい」というものでもなく、なぜ今の時点でそのような報道がされるのかよく分からないようです。

natrom.hatenablog.com

東芝が「1滴の血液から13種類のがんいずれかの有無を99%の精度で検出できる技術を開発し、2020年から実証試験を始める」というニュースが報道された。血液中のマイクロRNAをマーカーとするもので、研究としては以前から行われており*1、怪しいものではない。むしろ、なんで今さらこんなに大きく報道されているのかがよくわからない。

このように、NATROMさんは指摘しています。

 

さらに、報道では「99%の精度で検出」と紹介されましたが、これも「精度」の意味が不明確です。

「感度」と「特異度」の2つが重要であり、

指標の一つが「感度」で、疾患を持っている人の中で検査で陽性に出る人の割合を指す。乳がんの患者さん100人に対して検査を行い、そのうち99人が検査で陽性であれば、感度は99%である。血液1滴のがんの検査で感度が99%であるなら、これは優れていると言っていい。特定のがん腫において、マイクロRNAを用いた検査で感度が99%という報告はいくつかあるが*3、13種類のがんいずれかの有無」を感度99%で検出できるというのは、にわかには信じがたい。特異度がどれぐらいなのかを知りたい。

「特異度」は、疾患を持っていない人の中で検査で陰性に出る人の割合だ。感度と特異度を両立するのはしばしば困難で、感度を高めようとすると特異度が下がってしまう。極端な話、特異度を度外視すれば感度100%を達成するのは容易で、検査を受けた人全員を陽性と判断すると、特異度は0%だが感度は100%になる。検査の性能を評価するには、感度と特異度のどちらかだけでは不十分だ。「99%の精度で検出」と言われてもそれだけでは何とも、というのが正直なところ。感度と特異度の両方を報じて欲しい。

このように、不明確な「精度」というだけではよく分からないようです。

 

さらに、「どの集団」を対象とした検査かが問題で、こういった装置の開発研究では「がん患者の集団」を対象として試用されることが多いのですが、実際には「ほとんどガンではなくごく一部にガン患者がいる集団」が対象となるのがガン検診です。

 

これまでにも、「尿1滴で診断」といったガン診断法が実施されたこともありましたが、ほとんど効果が無かったようです。

 

どうやら、東芝のイメージ戦略が大きな要因となったような今回の発表のようです。

まあ、そんなにうまい話は簡単には無いのでしょう。

私もこのテレビ報道を見ましたが、コメンテーターが「一度は医療関係の装置開発は諦めた東芝がやってくれたか」と感動?していたのには違和感を感じました。