爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「ローマ貴族9つの習慣」マルクス・シドニウス・ファルクス著、ジェリー・トナー解説

古代ローマ帝国の貴族の生活や習慣などについて、帝政ローマで執政官も務めたという上流貴族のマルクス・シドニウス・ファルクスさんが、現代人向けに書いたということになっていますが、そんなはずはなく、実際に書いているのは当然ながら解説者として登場しているジェリー・トナーさんです。

トナーさんはケンブリッジ大学の研究者ということですので、古代ローマについても精通しているということで、あたかも実際に古代ローマに住む貴族が現代人にあてて説明しているかのような風情であり、おそらく内容にも間違いはないのでしょう。

 

このような構成の本を以前に「奴隷のしつけ方」と題して出版し、そこそこの売れ行きを達成したということで、二匹目のドジョウを狙ったのでしょうか。

 

古代ローマの人々の生活や習慣、意識といったものは、現代のヨーロッパ人とは大きく異なっているということは知られていることでしょう。

ローマもキリスト教を受け入れそれを国教とするようになってから人々の意識も大きく変わっていき、それで古代ローマ帝国は滅亡したと信じられています。

そうであれば、古代ローマ貴族の意識を覗くことでまた繁栄の基が作られるかも知れません。

 

そんなわけで、本書はローマ貴族として地位と資産を築くにはどうすればよいか、貞淑な妻を娶るにはどうすればよいか、等々、古代ローマの各種の記録を十分に駆使して説明しています。

ハイライトは、第7章の「ローマ人の精神を身につける」といったあたりでしょうか。

未だ堕落の道に陥っていなかった時代のローマ貴族は、国家のために身を捨てるという英雄譚が好みであったのでしょう。

そして、最終章の「誉れ高く死ぬ」に続いていきます。

 

なかなか面白い読み物ですが、ヨーロッパ人の読み方と日本人の捉え方はかなり異なるかも知れません。

テルマエ・ロマエで描かれたように、風呂好きでつながる日本人は古代ローマ人の意識と近かったのでしょうか。

 

ローマ貴族9つの習慣

ローマ貴族9つの習慣