内田樹さんはその著書を何冊か読んで以来、非常に的確な社会情勢の判断に感服し、その後「内田樹の研究室」というブログを常に拝読し注目しています。
今回は、その内田さんが元首相の鳩山友紀夫さん、鹿児島大学の木村朗さんと鼎談したという本をたまたま訪れた書店で見かけ、思わず買ってしまいました。
鳩山さんも民主党政権時代に首相となったものの、打ち出した政策に反対者たちから総攻撃を受け、あえなく総理退陣となったばかりでなく、その後も韓国や中国訪問については日本国内諸方面から国賊扱いだけならまだしも、狂人とまで言われることになっています。
しかし、この本を読む限り非常に的確な国際政治の判断基準をお持ちであることが分かり、現政権を含む他のほとんどの人々の方が狂っているとも感じられます。
もう一方の鹿児島大学教授の木村さんも同じような立場の方と見られます。
そのような3人が、現状について鼎談されており、その見方についてはどれをとっても肯かされるものばかりです。
第1章は「対米自立」を金の力で成し遂げようとしてきた日本の蹉跌。鳩山さんの首相時代の体験も触れられています。
第2章が、書名にもなっている「株式会社化する日本」について。
以前から戯言として「日本株式会社」などと日本社会を表現することが行なわれていましたが、今日の現状はまさにその通りとなってしまったということです。
第3章は、「グローバル資本主義の末路」
今全世界を席巻しているグローバル資本主義というものが間違っているということはそれに身を投じて金儲けに狂奔している人間以外は、全世界の人々が気づいていることです。
しかし、それをどうすればよいかということにはまだ解答はありません。
第4章は「沖縄問題から見た新しい世界地図」
鳩山さんが首相時代に沖縄の米軍基地は県外へという、これも極めて当然のことを言ったために、多くの人々から総攻撃を受けるきっかけともなったのですが、これを見ていくと沖縄や日本のことだけでなく、世界のことも見えてくるという話です。
あちこちに、非常に興味深い指摘が出てきますが、全部を紹介するわけにも行きませんのでそのうち数点のみ。
面白いと思ったら、図書館で見つけるか、ご自分で購入して読んでください。
戦後政治史を見ると、対米自立志向の政権は短命で、対米従属度が強いほど長期政権となりました。
前者は石橋湛山、田中角栄、そして細川、鳩山といった人々で、後者が中曽根、小泉、安倍です。後者が一見「右派愛国者」的に装っているのが傑作かもしれません。
そして、「対米従属」と言っていますが、実際はアメリカという国に従属しているというよりは「在日米軍従属」であるという指摘はびったりと言い当てたという感覚です。
グローバル資本主義でほとんどの富がごく少数の富裕者に集中するというのは全世界に同時に起きています。
そこからのトリクルダウンも起きないということもはっきりしています。
すると、ほとんどの富は富裕者の懐に死蔵されてしまい、貧困者だけでなく中間層すら金を使うことができず、経済環境の悪化からテロや戦争に行き着くというのが避けられません。
多くの心ある思想家たちは何とかしてこの状況を変えようと考えていますが、妙案はないようです。
沖縄の基地問題はさらに混迷を深めていますが、対米従属の象徴的な問題となっています。
しかし、これまでの米軍基地というものは常に在日米軍が力ずくで奪って基地をしたのですが、はじめて日本側が進んで基地として提供しようとしているということで、これも象徴的な出来事となっています。
さらに、辺野古の飛行場ができれば嘉手納基地は返還されると称していますが、辺野古は「海兵隊基地」としてしか使われず、嘉手納は変わらずに「空軍基地」として使われるだろうとしています。
これは、沖縄でアメリカ空軍と海兵隊が勢力争いをしていることのとばっちりを受けただけだと。
そして、すでに中国のミサイルが照準を合わせている沖縄の基地に、米軍を置いておくのは危険以外の何者でもなく、海兵隊の存在自体が疑問視され始めている時代にもはや辺野古基地が完成しても使いようがないとも。
だいたい、「海兵隊が敵前上陸」っていつの時代の話でしょうか。
いろいろと、刺激的で「これこそ真実」と思わせる内容の本でした。