中国と日本との間の反発感情は深いものがあり、ちょっとのきっかけで爆発すると言った事件が度々起こります。
両国ともに、内部には様々な意見を持つ人を抱えており過激な意見ばかりが目に付けば本当の多数派はどう考えているかということが見づらくなってしまいます。
本書の二人の著者のうち、呉さんは中国社会科学院の研究員、王さんは日本の大学の教授と言うことで、中国の公式の立場に近い意見をお持ちのことと思います。
王さんは、日本滞在もかなり長いため、日本側の数々の意見についても広く知識をお持ちのようで、この本も日本側の代表的な意見に対して中国側がどう考えるかということを整理して書かれており、それに賛成できるか反対かはともかく、実態を見ることができるようです。
2004年のアジアカップサッカー開催の時に、中国人の観客が日本チームに対し政治的なスローガンを叫ぶという事件が発生しました。
これに対し、日本側では「反日感情を煽る中国側に問題あり」という論調が多数でしたが、これに対し本書では「反日感情ではなく、日本が侵略戦争に対する反省と罪を認めることを拒絶していることに対しての”対日嫌悪感”である」としています。
これに対して、日本側から出されることの多い反論の例をあげ、それに対して答えると言う形式で進めています。
それぞれの議論を取り上げることはしませんが、特徴的なものをいくつか挙げてみます。
日本側反論 村山談話で、村山富市元首相は侵略戦争を認めて謝罪・反省を表している。
中国側では、村山談話も侵略戦争を完全には認めていないと見ています。しかし、それ以上に、対外的に村山談話というものを持ち出しながら、国内では侵略性にはまったく触れていない「不戦決議」なるものを国会で議決しています。
国内と海外向けで態度を使い分ける姿勢に中国は気付いています。
中国は、靖国神社が戦前から天皇の名において兵士を戦場に駆り立てた戦争神社としての性格を持っていることを知っているが、それ以上に東京裁判において死刑となった14名のA級戦犯を合祀していることを問題視している。
中国に大きな災禍をもたらした元凶とされる戦犯を参拝することは、中国人民を敵視することに他ならない。
他にもありますが、どうも中国側は二枚舌と言うものを嫌うという姿勢があるようです。
直接中国に対しては反省していると言い、謝罪するにも関わらず、国内では違う行動を取り、発言をするというのが不信感を増しているということでしょうか。
「反日感情」かそれとも「対日嫌悪感」か―日本側との論争はたして誰の問題なのか?
- 作者: 王智新,呉広義
- 出版社/メーカー: 日本僑報社
- 発売日: 2005/01/01
- メディア: 新書
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