著者の馬さんは中国の人民日報の論説委員であった2002年に「対日関係の新思考」という意見を発表し、中国国民から激しい非難を浴びました。
その中では、硬直した反日意識を改めて中国と日本とで新たなアジアの体制を作るべきだとしたのですが、それが反日感情を刺激して多くの脅迫を受けたのでした。
しかしその考えはこの本「憎しみに未来はない」を書いた2013年になってもまったく変わりはないようです。
情勢はさらに悪化しているようにも見えますが、一部の扇動者の存在があっても中日両国の心ある国民はこれに賛同すると信じています。
「新思考」というものは、実は馬さんの発想によるものではなく、鄧小平と胡耀邦の対日観から生まれたものだと書かれています。
しかし、中国でも指導者が交替しその基本思想に変化はなかったのでしょうか。
尖閣諸島をめぐり日中の軋轢が増していますが、実は中国は国境を接する多くの国々と同様な問題を抱えています。
尖閣で日中が戦争をすると予測する人々も居ますが、それくらいなら中国はインドやベトナム、マレーシア、韓国等々といくら戦争をしても足りません。
中国国民の間では、日本は軍国主義者の復活が起きておりやがて中国に再び戦争を仕掛けてくるという観念に囚われている人々も多いようです。
彼らに対し、馬さんがそれを否定して「日本国民のほとんどは戦争の可能性を考えてもいない」と書くとさらに反発を強めます。
このあたりの感覚は日本人からは想像ができないものかもしれません。
なお、馬さんの「日本はもう中国に謝罪しなくていい」という本が2004年に文芸春秋社から出版されていますが、これは馬さんの「謝罪を越えて」という中国語著書の翻訳でした。
この題名となったことについては、馬さんは何も相談も受けておらず、文藝春秋社の「悪だくみだ」と感じたそうです。
馬さんからの抗議はされたそうですが、そのまま発売は継続されているようです。
中国という国は(韓国もそうですが)、日本に対して理解を示すようなことを言ったり書いたりしただけで激しい非難を受けるということがまだ当分は続きそうです。
まあ日本はまだそこまでは行っていないようですので、それがわずかな救いではあります。(この先は分かりませんが)