腐生植物というと、なにか字面からの印象で動植物の死体などの腐った物に生えているというイメージが強いかと思います。
実際にかつての植物図鑑などにはそのように書かれているものもあるようですが、実際はそうではなく、「生きているカビやキノコから栄養を取って生きている」植物なんだそうです。
あまりにも実態とは異なるイメージを与える名称であるとして、最近は「菌従属栄養植物」と称するようですが、これでは何か言いにくい。
生きている植物から栄養を取るものは「寄生植物」であり、これも別物です。
実はこういった腐生植物は、非常に目につきにくいためにまだ知られていない種も多数あるようです。
本書の最初はギンリョウソウ(銀龍草)の写真から始まります。
まったく緑の葉というものを持たず、太めの茎に真っ白で大きな花を着けます。
その根は腐生植物の一番の特徴である、カビやキノコの菌糸と混じり合った菌根というものを形成しており、そこから栄養を吸い上げています。
きれいな花を咲かせるランにもこのような栄養摂取をする種が数多く含まれています。
多くの種ではまだ光合成をする葉を持っており、一部の栄養のみ菌類から取るのですが、中にはほとんど光合成をしないものも含まれています。
腐生植物の食物となる、カビやキノコとは、森林の植物を栄養として分解する働きを持つのですが、それを栄養とする腐生植物は言ってみれば「森を食べている」とも考えられるわけです。
それが本書の題名にもなっています。
腐生植物は、光合成をする葉緑体を持たず、葉と言うものも無くしてしまいました。
そのため、普段は茎が一本伸びているだけです。
花が咲くとようやくそれを分かるのですが、それ以外の時期にはほとんど目立ちません。
そのせいか、植物学者の人々の関心も向くことがなかったため、いまだに数多くの新種が存在するものと考えられています。
著者はその調査のためにインドネシアのボルネオ島に赴きました。少し歩くだけで多くの腐生植物が見つかり、いくつかは新種が含まれていたそうです。
こういったことは別に熱帯の森林に行かなくても見られるそうで、日本でも時と場所を選べば多くの腐生植物を見ることができるそうです。
ただし、それにはいくつかの条件があるそうで、その「探し方」というのも本書の第4章に載せられています。
その条件とは、「よい森に行く」ことだそうです。
この「よい」というのは、あくまでも腐生植物にとって良いということであり、腐生植物は安定した森で安心してキノコなどから栄養を貰うことで生きていますので、不安定な森林では生育できません。
このような腐生植物となった種は多くの植物の仲間に含まれており、単子葉類、双子葉類を問わず様々な属に広がっているそうです。
私もかつてはキノコの採取旅行というものをしたことがありましたが、その時にもしかしたら出会っていたのかもしれません。その知識もなかったのでまったく気づきませんでした。
いや、知らないことがまだまだ多いもんだ。