非常に多数の執筆者たちが項目別に書いたものをまとめてあるものですが、よくある本のように無名のライターが集まって書いたというものではなく、数十人に上る執筆陣はそれぞれが大学教授や評論家等、専門家が集まっているということです。
したがって、内容もかなり手厚いものになっているようですが、そこまで力を入れて出版したのには何か理由があるのか、少し疑問も感じますが。
さて、ナチスドイツを率い世界を第2次世界大戦に巻き込んだヒトラーについては、現在でもほぼ全否定に近い対応がされているようです。
ネオナチと呼ばれる人々は厳しく弾圧され、ヒトラー研究も制限されている面が多いようですが、逆に考えると大戦の惨禍をすべてヒトラーに背負わせて他の人々は知らぬ顔をしているようにも見えます。
だからこそ、ヒトラーの全貌というものをできるだけ知っておくことも必要になるのかもしれません。
本書構成は3部となっており、1部はヒトラーの人そのものについて、2部はヒトラーの戦争について、3部はヒトラーをめぐる人々についてとなっています。
ヒトラーはオーストリア・ハンガリー帝国に住むドイツ人のアロイス・ヒトラーの息子として生まれました。
実はユダヤ人の血が流れていてそれがユダヤ人虐殺の理由だったという説も出ましたが、どうやらその可能性は無いようです。
父親は官吏だったのですが、早く亡くなりました。しかしその恩給があったので生活にすぐ困るということはなかったようです。
ウィーンの美術大学の絵画科を受験しましたが、何度も失敗しました。そしてそのまま徴兵されるところを逃亡してドイツに入ります。
第1次世界大戦でドイツは敗北し共和制になりますが、その中で共産党と右派労働者党など様々な勢力が進捗します。
その中で、ヒトラーはドイツ労働者党、国民社会主義労働者党といった政治集団をたちあげ、それがやがてナチスとなっていきます。
ミュンヘン一揆と言われるクーデター事件で失敗しますがその後復活しやがてドイツの政権に入ることになります。
このあたりの経緯は複雑なようです。
国会放火事件というものも発生し、一気に勢力を拡大し政権をとらえることになりました。
ヒトラーの外交では特に目を引くのが、1939年の独ソ不可侵条約の締結でしょう。
それまでは双方が相手を不倶戴天の敵と称し、仮想敵国としていたのが逆転して条約締結となりました。
これはドイツにとってはポーランド侵攻を可能にしたということになります。
ひいてはこれが第二次世界大戦を招いたということにもなったということです。
ポーランド侵攻は成功し、英仏はドイツに宣戦布告し戦争状態に入りました。
しかし、最初の7ヶ月間は戦闘も少なく双方とも動きが少なかったようです。
その後、電撃作戦でオランダ、ベルギーからフランスまで一気に占領しました。
さらにイギリスにも侵攻しようとしたのですが、航空戦で失敗してそれは不可能になりました。イギリスとの講和交渉も行われたようですが受け入れられませんでした。
そこで目を向けたのがソ連侵攻だったようです。
1941年6月に独ソ戦争が始まりました。
最初の快進撃はすさまじいものでした。
この戦果が結局は日本の参戦にも影響しました。これがなければ日本も戦線拡大には動かなかったかもしれません。
しかし、モスクワでの大攻防戦で流れが変わりました。ソ連の必死の防衛で冬まで持ちこたえ、ナポレオンの二の舞いとなってしまいました。
ヒトラーというと悪魔のようなイメージで見られることが多いようです。しかし、その個人はあくまでも人間であったと言えるようです。
それが行為は確かに悪魔的であった。というのは人間というものが立場によって変わってしまうということなんでしょう。