ユネスコが定める世界遺産は毎年多数の登録がされており、2016年で1000件以上に上っています。
この本はそのうち世界各国の文化遺産について歴史が専門で高校の教諭を勤められた寺沢さんが34件を解説されているものです。
有名なものはその概略はおぼろげながらでも知られているかもしれませんが、ここに上げられたものの中にも私でも全く未知のものがかなり多く存在しています。
まあ、日本ですでに登録されているもの、これから目指しているものなのでも、外国人から見るとまったく分からないだろうなと思うものが多数ありますので、反対の立場から見ればそういうことなんでしょう。
それでは、まったくの初耳だったものから何点か。
ウズベキスタンのヒヴァのイチャン・カラ
シルクロードの中継点として16世紀以降に栄えたところだそうです。イチャン・カラとは「内城」を意味し、「外城」のディシャン・カラに対して王宮やハーレム・モスクなどが位置するところだそうです。
グルジア(現在はジョージア)のムツヘタのグルジア正教会総本山
ムツヘタはグルジアがキリスト教化したのと同じ頃の4世紀に最盛期を迎えたそうです。5世紀にはカトリコスと呼ばれるグルジア正教会主教座がおかれ繁栄したとか。
アメリカイリノイ州のカホキア土塁遺跡
BC1000年頃から白人による侵入までの間にアメリカ東部ではマウンド(土塁)を中心とする文化が栄えていました。
マウンドの形や大きさは様々ですが、大きいものでは数百mの広さで高さも30mに達し、体積はエジプトのピラミッドも越えるとか。
それがどのような意味であったのかよく判っていないようです。
巻末には、世界各国遺産は文化遺産ばかりであるのに対しなぜか日本の自然遺産候補が簡単に紹介されています。
この本の出版は2003年ですので、その時は1993年に登録された白神山地と屋久島だけだったのですが、その後小笠原と知床が登録されています。
それを含めた多くの地域が紹介されていますが、その後文化遺産に変えて登録された富士山も自然遺産候補として紹介されているのはご愛嬌というか、なんというか。
さて、多くの未知の知識が得られた本書ですが、中には簡単に分かる明白な間違いがあるのはどうしたことでしょうか。
寺沢さんも監修という立場ですから、執筆者は別にいてチェック漏れということでしょうか。
アルメニアの項で、古代アルメニアがローマ帝国とササン朝ペルシアに分割統治されることとなったとあります。
しかし、「ササン朝ペルシアはイスラムの国」というのはどうでしょう。
ササン朝ペルシアの時代にはまだイスラム教は存在していません。この国はゾロアスター教を信仰した最後の国と言われています。
また、清の承徳山荘の項で、「清国は1616年に建国され1912年に滅亡」は良いのですが、カッコ内に「清と改名したのは1936年」とあるのは明らかに間違いでしょう。
ちょっとチェックの甘さが気になります。他の所は大丈夫なんでしょうか。