爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「誇大自己症候群」岡田尊司著

岡田さんは精神科医ですが、少年院に勤務し犯行を起こした少年の精神について直接当たっているということです。
そのような著者ですが、最近の犯罪を犯す少年はまったく精神的に問題が見られないということが多いということです。
同級生を殺害したという女子生徒の事件もありましたが、なんら精神的に病的な点がないというのが特徴にもなっているようです。

このような疾患とも言えないような性格が犯罪にもつながりかねないものであり、それが「誇大自己症候群」というものだということです。
これは現代だけの問題ではなく、特に昔から権力者の子供などには顕著に見られる傾向があったようです。すなわち、甘やかされて育って何も抑制されることがないまま大人になり、しかも真に愛されるということがなかったというような人が陥った境遇です。
現代は、権力者でなくてもこういった境遇で成長する子供が増えているのかも知れません。そういった人々は非常に自己愛が強いという特徴があります。
これには現代の家庭での子供の養育について増大してきた環境が関わっているということです。すなわち、父権の衰退により溺愛する母親を抑制できないということに象徴的な家庭や、社会全体として自己を主張する方が善とされるような躁的社会、そして個人個人のレベルまで激しい競争に巻き込まれているという競争社会という環境です。こういった中で育つ子供は少し間違えば誇大自己症候群とも言うべき性格になるようです。

この性格が犯罪に結びついているという事例が非常に多いというのが著者の意見です。甘やかされ何一つできないことがなかったような幼少期から競争社会に放り込まれて何もできなくなり爆発してしまうという事件は数多く発生しています。そこには精神症と言うべきほどの異常もなく、見た目には普通の子供がいるだけです。

そこから抜け出せたという人も多く居るようですが、社会全体が格差と競争の時代ではそれも難しいものがありそうです。