ロビン・フッドというと子供向けの本や映画のイメージが強いように思いますが、中世からイギリスで様々に扱われてきたということを、英文学専攻で東京都立大教授(当時)の上野さんが解説されています。
登場人物にリチャード1世が居ることから、12世紀が舞台であることは確かですが、ロビンが実在したかどうかは不明です。モデルになったようなアウトローは何人も居たのは事実でしょう。
語られ始めたのは14世紀頃の吟遊詩人によってバラッドとしてのもののようです。15世紀にはそれが「ロビン・フッドの武勲」と言う形で固定されてきたようです。物語の基本的な筋や登場人物も決まってきました。
15世紀から17世紀にかけてはイギリスでは五月祭と呼ばれる住民あげての祭が盛んでしたが、そこでの催しの一つとしてロビン・フッドの演劇と言うものも流行したようです。ロビンの恋人としてマリアンが登場したのもこの頃からのようです。
16世紀頃からは「ブロードサイド・バラッド」と呼ばれる廉価な出版物が出回るようになりますが、その主題としてもロビン・フッドが人気だったようです。しかし、時代性からか初期のような豪放磊落なものではなく、教訓臭が強いものになってしまいました。
17世紀にクロムウェルの共和制が終わり王政復古したころからは、音楽劇・パントタイムなどとしてロビン・フッドが演じられました。以前のものとは異なり、ロビンがヨーマン出身から貴族出身へと変化してきたそうです。
さらに、マリアンとのロマンスを強調したものになっていきます。
ロマン主義の時代になって、サー・ウォルター・スコットのアイバンホーに登場したりという変遷も遂げるわけですが、ロビンはサクソン人の貴族でノルマンの支配者と戦うと言う性格も固定していくようです。
その後、19世紀になると児童文学として数々の著作を生むようになっていきました。暴力的な闘いやロマンスといった面は少し弱まってしまったようです。
日本にも明治時代には伝わり、多くの本の出版がなされました。
映画の世界でもそのスペクタクル性からか多くの作品が作られ、ダグラス・フェアバンクスやエロル・フリンの作品は有名ですし、最近ではショーンコネリーとオードリーヘップバーンの作品も作られました。
ディズニー作品にも取り上げられています。
ロビン・フッドと言う義賊物というのは世界各国変わらずに人気があるようです。これからもそうでしょう。