爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「図解 錬金術」草野巧著

著者の草野さんという方は著者履歴がないのでよくは分かりませんが、他にも魔術などに関する著作のあるようです。

錬金術と言うと卑金属を金に変えるというもので、詐欺師が多いというようなイメージですが、近世にはそのような傾向が強くなったものの元々は科学と密接に結びついており、他の分野の科学の権威者が錬金術も行ったと言うことがあったようです。

錬金術と言っても黄金変成というのはごく一部であり、「不完全なものを完全なものに変える」というのがその目的であったようです。したがって、人間の病気を治し不老不死にするということもその目的の一つであることになります。大きく言えば未完成の宇宙を完成させると言うことになります。

起源は西暦紀元前後のエジプトのアレクサンドリアにあったようです。エジプトやギリシアの技術、哲学などが結びついて出現しました。その後はキリスト教の異端審問の厳しかったヨーロッパには向かわず、イスラム世界で発展しました。医学や哲学で有名なアビケンナ(イブン・シーナー)も金属変成というものは否定したものの、他の錬金術関連の技術や哲学には業績を残したようです。
その後、ヨーロッパにも広まりパラケルススなどの活躍もありました。

しかし、金を作り出す金属変成技術の面ばかりが注目を集めたため、権力者に捕まって拷問を受けると言うことも起こったようです。
また、逆にその技術を持っているとして金を引き出す詐欺者も多くなるようになりました。

最後には科学の発展でその息の根を止められた錬金術ですが、化学の分野では数々の貢献をしています。酸やアルカリ、金属反応など錬金術の研究の過程で生まれた発見は相当数に上るようです。

現代では原子種の変換と言うことも起こることが分かってきました。多くの錬金術師の夢がかなったのかも知れません。