爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「”アベノミクス”の真相」浜矩子著

時々文章を拝見することもある同志社大学の浜教授が2013年5月の時点でアベノミクスと言うものの本質を論じたものです。素人向けに易しく解説してあり分かりやすいものになっています。

三本の矢と称していますが、その最初の金融政策については完全なバブルの誘発で一部に金を回して好景気の雰囲気だけを作り出しただけと言うことです。1990年代にイギリスでも同様の状況となり、実経済デフレはまったく変わらない中で資産インフレだけが進行していたという事態になったようです。これを実経済に波及させると言うのは困難でしょう。設備投資や個人消費に向けさせようなどとは夢にも思わず、ひたすら投資に流れ込むようにさせているだけだそうです。ABEとはAsset Bubble Economicsだそうです。
財政政策についてもその行き先は旧来通りのもので、国土強靭化などといっても結局はばら撒きの再開だけです。税も社会保障も何の工夫もありません。
成長戦略にいたっては素人が見ても何の見通しも立てられないような思いつきだけの羅列で、このようなもので成長できるならすでに成長し切っているはずです。

女性活用などという話も大きく出ていますが、これも女性を機械として使うようなイメージです。そこで著者が挙げているのが例の「女性は産む機械」発言です。私も忘れていましたがこれは2007年に当時の厚生労働大臣であった柳沢伯夫が口を滑らせたものですが、その時は第1次安倍内閣だったというのは気がつきませんでした。安倍の体質がそのまま出ていたのかと納得の話です。

最後に著者が述べていますが、「成長しなければ弱者救済もできない」というのも安倍の主張ですが、それが嘘っぱちで、本当は今は成長よりも分配を見直す時期だそうです。日本の経済ではこれまで正当な分配の制度と言うものが無く、それを民間経済が年功序列や終身雇用というもので補ってきた状態だったようです。それが立ち行かなくなってきて本当に何も無くなってしまいがたがたになってきました。今こそ政治から分配を見直さなければもっと大変なことになりそうだということです。

アベノミクスが滑り出した当初からこのような指摘をされた浜教授の慧眼には敬服しますが、それから半年以上が過ぎてますますこれらの点が現実化してきたようです。そしてそれは経済を目的としたものではなく、選挙で議員を集めることが第一義であり、それを使って彼の極右政策を実現したいだけだと言う正体も明らかになってきました。そのようなアベノミクスにごまかされただけの国民が一番バカだと言う話でしょう。