爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「いちばんやさしい地球変動の話」巽好幸著

マグマ学者で海洋研究機構プログラムディレクターという巽さんが地球内部の動きをできるだけ素人向けに解説されたものです。(現在は神戸大学に移られているようです)

地球の内部が核、マントル、地殻と分かれているということはなんとなくは知っていましたが、このあたりを詳しく書かれています。それを知ると地震や火山の原因というものも判ってきそうです。
地球全体の物質の存在というものもかなり判明しているようですが、水は海にほとんどあるものと思っていましたが、大部分は核やマントルの中に存在しているそうです。また、炭素も同様で地表にある分はほんの一部ということは思い至りませんでした。化石燃料の炭素が大気中に戻るということが大げさに言われていますが、本当ははるかに大量の炭素が地球内部にあるということです。

地震の起こる原因としてプレートテクニクスが説明されていますが、それも普通に言われているような単純なものではなくプレート自体も全世界にある10数枚のプレートそれぞれに異なるようです。
その4枚が日本でぶつかっているという大変な状況で、日本列島というのは世界でも特異な場所であることがわかります。よくそんなところに住んでいるなという思いがあります。ちょうど今日のニュースで首都圏直下地震の被害予測ということが出ましたが、最悪の場合被害総額が100兆にもなりうるとか。それ以前に何とかすべきでしょう。秘密法案などやっている場合ではないでしょう。

火山が多いということもプレートの衝突というところから出てくるようです。ここで大きな勘違いに気付きました。それは「マグマ」というものはどこにでもあるというものではなく、マントルにプレートの沈み込みにより水が供給されることで溶かされて初めて出来るものだということです。つまりプレートの境界面に特有の現象なんだそうです。

また、プレートが移動する際にいろいろな物質をくっつけて来るのですが、南の島のサンゴ礁なども付けて来るそうです。そういったものを「付加体」というそうなのですが、それがプレートの衝突で沈み込む際には沈むことができず地表に残していくことになるようです。日本各地に鍾乳洞や石灰地層が残されていますが、そのようなものもプレート移動の結果ということで、あらためて感心です。

火山の噴火については「巨大カルデラ噴火」も触れられています。87000年前の阿蘇4噴火では2.5テラトンの噴出物があり、九州全土を覆いつくし火山灰は北海道まで積もったそうです。7300年前の鬼界カルデラ噴火では九州の縄文文化がすべて埋もれました。もしもこの程度の噴火が今起これば、犠牲は1000万人以上になるということです。以前に「死都日本」というカルデラ噴火を題材にした小説を読んだことがあり、興味をもっていろいろ調べたのですが、どうも1万年に1度くらいはそのような噴火が日本に起こっているようです。前回から7000年経っているとするとあと3000年ほどの間にはまた来るのでしょうか。まあ3000年も先まで日本という国はないでしょうが。

なお、本書中に日本列島で一番古い岩石というものが載っていますが、それが岐阜県加茂郡七宗町(ひちそう)(しちではありません)の片麻岩だそうです。実は七宗町は父方の祖母の出身地だそうです。自分が産まれるよりだいぶ前に亡くなった祖母ですので、まったくそちらにも行った事もありませんが、偶然その名を聞いて驚きました。