火山学者として有名な鎌田さんの本はこれまでにも読んでいますが、「マグマ」そのものについて詳しく説明されている本書は、非常に興味深い内容です。
別の本で、「マグマはプレート運動で海水がマントルと触れ合ってできる」ということを知り驚きました。
しかし、この本で「マグマのでき方にはいくつもの過程があり、水と触れるというのもそのうちの一つである」ということを知りました。
これも驚きです。
マグマができ、それが地上に噴出するということも、プレートテクトニクスによるものです。
それは、大陸が移動するという学説から発展してきました。
ドイツの科学者ウェゲナーが1912年に大陸移動説を発表したときにはほとんど受け入れられませんでした。
それが他の現象からの証拠も集めて実証されてきたのはようやく20世紀も後半になってからのことでした。
火山活動はプレートの動きから起きているのですが、その場所によりその性格も異なります。
地下から続々とマグマが上がってくる中央海嶺(拡大軸とも)では常時大量のマグマが湧き出してきます。
そのプレートの一番先端、他のプレートと衝突して沈み込む部分では、海水がプレートに巻き込まれて沈んでいき、それが地下のマントルと混じり合ってマントルを溶かし、マグマとなって岩の隙間を伝って地上に吹き出します。
これが日本などの島弧での火山爆発です。
それ以外にもホットスポットという地域もあります。
ハワイがそれに当たるのですが、大洋の真ん中に熱が特異的に上昇してくる場所があります。
デカン高原の洪水玄武岩と呼ばれる大量のマグマ流出の名残もその1種だったと考えられています。
イエローストーンの巨大カルデラ噴火もこれだったということです。
マグマがどうやってできるかを調べるには、地球内部の構造の研究が進むことが必要でした。
様々な方法によって捉えられたその構造は、中心に固体状の金属の内核、そして液状の金属の外核があり、その外側に固体の岩石のマントルがあります。
マントルの外側に薄い岩石の地殻があります。
マントルは非常に高温なのですが、圧力が高いために固体となっています。
マントルの上部、地下100から250km程度のところでは、岩石の主成分珪酸塩が溶解する温度である1000度以上の温度ですが、圧力が高いために固体となっています。
そこに何らかの刺激が加わり液状になってマグマとなるわけです。
固体状のマントルですが、それでも徐々に対流で移動します。
それが地表に近づいた場合、圧力が減少するためにそのまま融解してマグマとなることがあります。
また、何らかの揮発性物質、水や二酸化炭素、フッ素などが地下に入り込んでマントルと接触しても液状化してマグマとなることもあります。
このようなマグマのでき方により、マグマの成分も違ってきます。
そのため、地域によって、また火山一つ一つによってマグマの成分が異なるということになり、著者にとっては「非常に面白い」ということになります。
マグマに代表される地中の熱源というものをエネルギー源として利用しようとする、地中エネルギー開発はエネルギー供給不安がある中で進められています。
マグマに直接触れて熱源としようとする研究は、アメリカなどのマグマが流動している火山などで実施されていますが、成功例はないようです。
また、マグマに触れた地下水の熱を利用するということが広く研究されていますが、なかなか難しい問題が多いようです。
火山の爆発などでよく聞く「マグマ」ですが、いろいろな面があり興味は尽きないようです。