爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「食中毒の科学」本田武司著

食中毒といっても微生物だけではなく化学物質によるものもあるわけなんですが、これは大阪大学微生物病研究所教授という(当時)本田先生が書いたものですので、微生物中心です。
ただし、2000年発行の本ですので若干古いせいもあるのか、たとえばノロウイルスという現在では大問題のものもその名称ではなく「ノーウォークウイルス」と表記されています。

食の安全などと言いますが、イセエビと書いてロブスターを使おうが食の安全にはまったく関わりはありませんが、正真正銘安全に直結するのが食中毒であり、もっとも危険なものです。それも、化学物質食中毒というものは極めてまれになっていますが、微生物食中毒は今でも(というか今だからこそ)多数の発生となっています。基本的には本田先生がこの本を書かれた2000年とそれほどは状況の差は無いと思いますが、例えばウイルス検出法の進歩でノロウイルスの判定が極めて速くできるようになったということで、正確には知られていなかった食中毒発見の状況が判定できるようになったということは言えるかも知れません。

2000年といえばO157が猛威を振るっていた頃で、この本の導入部もそれから入ります。それから十数年経ちますが、発生状況は決して落ち着いてはいませんが、報道の熱気はすっかり冷めてしまったようです。
また、昭和59年の辛子レンコンのボツリヌス中毒もまだ記憶に新しかったようで、それも大きな扱いになっています。
しかし、カンピロバクターの方はまだ研究も進んでいなかったためか記述が少なかったのは仕方が無いことでしょうか。

当時よりさらにグローバル化が進んでいる状況では食中毒の危険性はさらに増えているでしょう。より一層の注意喚起が必要だと思います。

なお、さすがにお医者さんといえるのが、食中毒で起こる、下痢・嘔吐・腹痛・発熱の原因の解説です。これは知っていてためになることもありそうです。