爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「どうするプルトニウム」舘野淳、野口邦和、吉田康彦編

福島原発事故以降、専門的に解説をされている核・エネルギー問題情報センターの舘野さんが中心となってプルトニウムに関する問題点を専門家が解説された2006年の本です。
当時はもちろん福島事故が起こるとは思われなかった時点で、さらに北朝鮮核兵器開発も盛んな動きを見せ始めているところかと思います。

プルトニウムは自然にはほとんど存在しない元素で、ウラニウム使用の原発の使用済み燃料から抽出されますが、非常に毒性が強いことが知られています。また、原爆として利用しやすいことから、テロリストに奪われた時の危険性も格段に高いと言われています。
そのような状況でも利用を進めるというのは、原発使用済み燃料の処理に必要とされているからで、再処理工場で処理をしたプルトニウムを混ぜたMOX燃料を使うプルサーマルはすでに始められていました。これは再処理をしてプルトニウムを取り出すと核兵器利用の疑いをかけられるということで、全量を燃料として消費することが必要となるからです。なにか、最初の前提が間違うと次から次へと間違いを積み重ねてしまっているように見えます。

プルトニウムはもちろんこれまでは軍事利用がほとんどですが、あまり公表はされていないもののアメリカでもロシアでも相当な被害が出ているようです。数万人規模の被爆者が出たようで、これまた福島事故などお笑い種とも言えるような事態だったことになります。

なお、本書のなかで放射性廃棄物の処分法は「地層処分」といわれており、本来は確固とした地層が形成されているところに作るはずですが、日本では適地が少ないためか、実際は「地中処分」と言わざるを得ないようないい加減な場所に作られる可能性もあるようです。軟弱な地盤で地下水も届くようなところでは数万年というような保存は不可能ということですが、そういった部分は故意にぼかされているそうです。