爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「原子力・核・放射線事故の世界史」西尾漠著

東日本大震災に伴う福島原発事故は非常に大きな影響を残し、いまだに多くの立入禁止地域が存在し、その収束の見通しも立たないほどのものです。

その他の事故といえば、スリーマイル島原発事故、チェルノブイリ原発事故が挙げられますが、他にも多くの事故がありそうです。

 

この本は、そのように広く知られているとは言えないものの起きて被害を起こした事故について、紹介されています。

これがすべてということではないのでしょうが、その数だけでも圧倒されます。

さらに、あまり知られていないことですが、多くの人(主に作業者)が被爆し亡くなっているということです。

 

なお、この本では核研究初期のものは省いており、1945年以降のものとしています。

また、原子力発電所だけに限らず、核兵器放射線照射利用等の施設での事故も紹介されており、また不適切な廃棄物取扱により被爆したという事故も含まれています。

 

三大事故というべき上記の三例は重大なものですが、冷戦時の核兵器開発競争の頃の事故は情報が秘されていたものも多いようですが、その実例を見れば核爆発寸前といったものも多く、よく最悪の事態に至らずにとどまったと言えるようなものばかりです。

 

核兵器を搭載した爆撃機がそのまま墜落という例も数例あり、核爆発こそ起こさなかったものの、通常爆薬が爆発し中の核物質が飛散という悲惨な例も見られます。

また、核兵器を搭載したままの原子力潜水艦がそのまま沈没と言う例もあり、一つ間違えて核爆発していればどうなったかと思います。

 

原発開発初期の訳のわからないままの作業で臨界という事故も数多く、何人もの作業者が被爆し死亡しています。

日本では1999年のJCOでの臨界事故での死者だけということになっていますが、同様の事故は世界では頻発していたことが分かります。

 

福島原発事故については、多くの原発批判を繰り広げてきた著者だけに、厳しい指摘です。

その内容は、それまでに多くの人びとがさまざまに「予言してきた」ことだったということです。

東電は「想定外」と言いましたが、研究者の間ではすべて「想定内」でした。

そして、それらの現象が重なって現実のものとなり、その結果はすべての予言をはるかに超えるものとなってしまいました。

何より「想定外」なのは、その終わりがまったく見えてこないことだということです。

 

福島原発事故だけが突出して起きたのではなく、それまでに多くの事故の歴史があったということが分かります。

 

原子力・核・放射線事故の世界史

原子力・核・放射線事故の世界史