爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「コラーゲンの話」大崎茂芳著

大阪大学で繊維に関する研究で博士号を取得した後、製紙会社や販売会社に勤務したあと大学に転進したという大崎さんがコラーゲンにまつわる話をまとめたものですが、非常に高度な内容をコンパクトにまとめられているもので、中公新書のなかでも相当高いレベルのものではないかと思います。
コラーゲンは美容効果ばかりが強調されているようですが、生体内での働きは大きなものがあり、それもまだ研究が盛んになされている最中のようです。
コラーゲンは運動に伴う衝撃の軽減と言う意味からその焦点となる部位に多く存在しているようです。また、その分子の「配向性」というのも重要な要素であり、それにより組織の強度と言うものが変わってくるようです。
それを調べるために、著者は牛革やエイの皮、人間の肺の組織など、様々なものの測定を行ない、コラーゲンの分子の集まり方を解析していきます。それにより、筋肉などの運動の方向とコラーゲン分子の配向性が重要なかかわりを持っていることを明らかにしていきます。

昨今、言われているような「コラーゲンが年を取ると失われるから食物で補給」などということもまったく意味がないということも証明されています。コラーゲンを構成するアミノ酸の性質上、一度吸収するために分解したものは簡単には再構成されることはないようです。

そのような商売上の興味をはるかに越えたコラーゲンの意味の研究というのはいまだに広く実施されているともいえないようです。このような基礎的な学問研究をしてくれる若い研究者がいれば学問も発展するでしょうが、おそらくそういった分野には学生の進学も少ないでしょう。